
こんにちは、ファーマ・テック・トランスレーターの石川です。
久しぶりに自動翻訳の話題を取り上げます。皆さんは自動翻訳(T-4OO(ティーフォーオーオー)、オンヤクなど)を使いこなしていますか。
外国語が苦手であるという日本人にとって、日本語を外国語に翻訳する際、自動翻訳(機械翻訳)はとても便利なツールです。ところで、自動翻訳の特性を理解し、正しく使うためのコツがあるのをご存じでしょうか。特に、日本語は話者間(著者と読者を含みます)の共通の雰囲気、いわゆる「空気感」を前提に何気なく発言や文書化されることが多く、その空気感を翻訳エンジンにも伝える必要があるという点で、日本語から外国語に変換する用途で自動翻訳を利用する際には注意が必要です。(村上春樹氏は外国語に翻訳されやすいように文体を工夫されているという記事を読んだことがあります。SNSで日本の観光地や店舗で日本語と並べて吹き出しそうな英語が記載されているのが毎日のように紹介されています。)
一方で、論文などでは、特に査読済みの場合、引用内容を含めて、書いてあることが主張の全てであるので専門用語の適切性を除いて、自動翻訳でほとんどブレは生じません。
以下に、自動翻訳を日本語から外国語への翻訳に使う際のポイントについて、事例を交えてご紹介します。
日本語特有の表現を翻訳で伝えるには?
<文脈を補足する>
自動翻訳を使用する際には、文脈(対話または文の背景情報)を補足することが重要です。日本語では、文の意味が前後の文脈によって大きく変わることがあります。それをAI翻訳エンジンは十分に忖度することはできません。自動翻訳は単語や短文を翻訳する能力に優れています。生成AIへの文脈を含む長文の全文丸ごと翻訳指示の場合を除き、AIが文脈を完全に理解することは難しいため、日本語からの逐次翻訳では必要に応じて文脈を丁寧に補足説明する必要があります。
具体的手法としては、目の前にイメージを浮かべてそれを説明するように発話または作文します。

生成AIに翻訳や通訳を引き受けてもらうと、このような工夫は最低限で済むように感じます。それは、ヒストリー機能がユーザー独自の空気感を受け取って、自動調整してくれているようです。
Copilotにも同じような機能があります。受け取ってくれるのは文書内の状況に限られているようです。受け取れる情報の範囲で、Copilotの方は、通訳としては機能が若干劣っているように私には感じられます。

曖昧表現の明確化
日本語には「曖昧表現」が多く含まれます。例えば、「かもしれない」「だろう」「と思う」などの表現は、話者の意図を必要以上に柔らかく伝えるために使われますが、外国語に翻訳するときには意図がかえって曖昧になることがあります。これらの表現は意図(主張、推察、推量など)を具体的に言い換えることで、正直な意図を正しく伝える意味で翻訳精度を向上させることができます。
敬語の適用
日本語の敬語は、話者の立場や関係性を示す重要な要素ですが、外国語には同様の敬語表現が存在しない場合があります(全くないという訳ではありません)。自動翻訳を使う際には、敬称を除き、敬語を厳密に使いわける必要が無い場合が多いです。公式文書として残る場合には手動での文体修正は不可欠です。
事例1:ビジネスメールの翻訳

日本語のビジネスメールには、相手に対する礼儀や敬意を示す表現が多く使われます。例えば、「お世話になっております」「ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます」などの表現は、外国語に翻訳するときには文脈によって異なるニュアンスを持つことがあります。自動翻訳では、これらの表現を適切に翻訳するために、相手との関係性やメールの目的を文に表現して詳しく説明することが重要です。
セキュリティの保証された生成AIに状況を具体的に説明して、丸ごと日本語と英語での下書きをお願いする方法も良いかもしれません。
事例2:観光案内の翻訳

観光案内では、日本語特有の空気感を伝えることが重要です。例えば、「この季節には美しい桜が咲き誇る公園があります」という表現は、外国語に翻訳するときには「桜」が持つ文化的な意味も含めて伝える必要があります。自動翻訳ツールを使用する際には、桜の季節が持つ日本文化の価値を補足説明することで、より正確な翻訳が可能になります。
生成AIに状況を説明して、個人情報が含まれていないかを確認した上で過去の文例や類似事例を提示し、丸ごと日本語と英語での下書きをお願いする方法が良いかもしれません。
事例3:日常会話の翻訳

日常会話では、話者の空気感や感情を伝えることが求められます。例えば、「今日はちょっと寒いですね」という表現は、単に気温の話をしているだけでなく、相手への気遣いと自分の相手への共感を示すものです。自動翻訳を使う際には、こうした共感のニュアンスをどう伝えるかを考える必要があります。相手の気持ちを理解し、それを言語化することで、自然な翻訳が可能になります。
個人用途であれば、ヒストリー機能を有する生成AIに逐次通訳をお願いする方法が良いかもしれません。企業用途ではセキュリティの担保が重要になります。
自動翻訳を使いこなすための3つのコツ
自動翻訳を日本語から外国語への翻訳で使用する際には、文脈の補足や曖昧表現の明確化、敬語の適用の再考が重要です。これらのコツを活用することで、より正確で自然な翻訳が可能になります。また、具体的な事例を通じて、「空気感」を言語化する方法を学ぶことで、自動翻訳を効果的に利用することができるようになります。自動翻訳ツールを使いこなすことで、言語の壁を越えたコミュニケーションが可能になり、対話相手や読者とあなたとの理解が深まることでしょう。
今後は、社会のあらゆる場面でユーザーのリテラシー向上の相談相手(教師)として、日常業務のアシスタントとして生成AIの多様な機能を活用するようになっていくと予想されます。自動翻訳との付き合い方を身に着けておくことは、AIに日本語で意図を正確に伝えるという意味で、生成AIを使いこなせるスキルを先取りすることにもつながるのでは無いでしょうか。

株式会社ロゼッタ/ファーマ・テック・トランスレーター/石川 博
1979年にサントリー(株)の医薬事業の一期生として入社。製剤研究、医薬品開発や上市申請まで幅広い業務に携わる。その後、第一三共グループ時代にロゼッタのAI精度に感銘を受け、「言葉の壁を取り除く」使命を見出しロゼッタへ入社。現在、AI時代の到来に際して専門知識と経験を活かし、製薬業向け「ラクヤクAI」のサービス・CS向上を推進。言葉と製薬業界の未来を切り開く挑戦を続けている。
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