業務標準化を行うことで、生産性の向上や属人化の防止など複数のメリットがあります。クラウドツールやコミュニケーションツールを使い、効率的に業務のマニュアル化・フロー化を進めましょう。
日々の業務を行うとき、作業の担当者によって作業方法がバラバラだったり、品質が異なっていたりすることも珍しくありません。しかし、業務の正しいフローを設定し、作業担当者によって品質のばらつきが出ないようにすることで、さまざまなメリットがあります。
当記事では、業務の方法や品質を統一する「業務標準化」のメリットや導入方法について詳しく解説します。日々の業務を改善したい場合は当記事をぜひ参考にしてください。
1. 業務標準化とは?
業務標準化とは従業員ごとの作業手順や対応などの違いを排除し、同様の成果を出せる環境を整備する取り組みを指します。業務標準化をより詳細に区分すると、業務フローの標準化・タスクの標準化に分類が可能です。
- 業務フローの標準化
業務フローの標準化は業務の流れを可視化して、従業員の全員が把握できる状態を作ることです。業務フローの標準化を進める際には「現在の業務の流れを見直して不要な工程を削除する」「順番を入れ替える」などの取り組みも行います。 - タスクの標準化
タスクの標準化は作業のルールやノウハウをマニュアル化し、いずれの従業員が実施しても一定の業務品質を維持できる状態を作ることです。タスクの標準化で作成したマニュアルは、すべての従業員が参照しやすい形で共有します。
業務の標準化と似た概念の言葉に「業務効率化」があるものの、目的が異なります。業務効率化は、従業員が効率的に働ける環境を整備する目的で業務プロセスの無理・ムダ・ムラを削減する取り組みです。
1-1. 業務標準化を行うメリット
業務標準化は、少子高齢化や人材の流動化の影響による人手不足への対応策としても注目される取り組みです。業務標準化には、以下3つのメリットが期待されます。
- 生産性が上がる
業務標準化を行うと業務フローやタスクが最適化され、作業のムダを削減できます。作業のムダを削減すると同じ労働力でより多くの成果を出せるため、生産性の向上につなげることが可能です。 - 全体の品質が上がる
従業員の全員が同一の流れで業務に取り組めば、品質の安定化を図れます。タスクの標準化によって作業のルールやポイントを共有すれば、人為的なミスの予防も可能です。 - 属人化を防げる
業務標準化の仕組みを構築すればあらゆる作業の属人化を防止し、ナレッジを蓄積できます。属人化を防止できれば作業担当者が不在の状況で、業務が滞る問題も発生しません。
業務標準化を通じて作成したマニュアルや業務フローは、作業担当者が交代する際に引き継ぎを行うための資料としても活用できます。また、作成したマニュアルやフローチャートを新入社員研修の資料として活用すれば、即戦力化を促すことも可能です。
2. 業務標準化を実施する手順
業務標準化は、「現状把握」「対象とする業務の決定」「マニュアルと業務フローの作成」の順番で実施する必要があります。作成したマニュアルや業務フローは必要に応じて見直し、より良い内容にブラッシュアップすることも必要です。
以下では業務標準化を実施する際の流れをステップごとに区分し、より詳細に紹介します。
2-1. 業務の現状を把握する
業務標準化は、自社の課題を解決して業務改善を図るために実施する取り組みです。業務標準化を行う前に業務の棚卸しで組織としての現状を正しく把握し、課題を明確化してください。
業務の棚卸しとは、社内にあるすべての仕事の業務プロセスを可視化して整理することを指します。業務の棚卸しを進める際には現場の管理者や作業者にヒアリングしてすべての仕事を洗い出し、フローチャートなどの形に整理しましょう。
2-2. 業務整理を行う
棚卸しした業務に優先順位を付け、標準化の対象業務を決定します。企業のコア業務や課題が明確化している業務は組織に対する影響が大きいことから、業務標準化の優先度が高いです。標準化の対象業務は実測法・実績記入法・推定比率法などの手段で業務量を把握し、定量化します。
実測法 | 作業の様子を観察し、作業内容や所要時間を計測する方法 |
実績記入法 | 作業者にアンケートを配布し、所要時間を記入させる方法 |
推定比率法 | 業者の1日の就業時間から逆算し、所要時間を推定する方法 |
業務を定量化した結果、特定の従業員に過重な負担がかかっている場合には配分を見直し、平準化を図ってください。
2-3. マニュアルと業務フローを作る
業務標準化の対象業務の手順や注意事項を共有するため、マニュアルと業務フローを作成します。業務フローとは、作業の手順を図式化して分かりやすく説明した資料です。業務フローには主に以下の規格があるため、自社に合うものを活用しましょう。
- JIS
- DFD(データフロー図)
- UMLアクティビティ図
- BPMNビジネスプロセスモデリング表記法
また、マニュアルは、クラウドツールを活用して作成すると便利です。クラウドツールのテンプレートを活用すれば簡単に、作業者にとって親切なマニュアルを作成できます。
2-4. PDCAを回す
作成した業務フローやマニュアルを組織内で共有し、実際に日々の業務で運用します。運用中に問題点が発覚した場合には随時見直し、より良い内容へ改善しましょう。問題点がない場合も定期的にヒアリングをして、改善を図ることが大切です。
マニュアルの共有やヒアリングを効率化し、業務標準化のPDCAサイクルをスムーズに回すためにも、クラウドツールが役立ちます。以下は、業務標準化で活用できるクラウドツールの例です。
- コミュニケーションツール
- タスク管理ツール
- ファイル管理ツール
クラウドツールの中には、業務標準化に役立つ機能が複数搭載されたツールもあります。ツールの導入に迷う場合には無料トライアルで操作性を確認した上、検討すると安心でしょう。
3. 業務を標準化する際の注意点
業務標準化にはさまざまなメリットが期待される反面、注意点もいくつかあります。注意点を無視して業務標準化に取り組むと逆効果になるリスクもあるため、注意しましょう。
以下では、業務を標準化する際に意識したい注意点と対策を紹介します。
3‐1. 標準化に向いていない業務があることを意識する
高度なスキルと経験が要求される専門性の高い業務やデザインセンスが強く反映される業務を標準化すると、作業者のモチベーションを低下させるリスクがあります。向かない業務を無理に標準化することは避け、個人の裁量による作業をある程度は認めましょう。ただし、組織としての統制を維持するために作業者には自社のビジョンやブランドイメージを共有し、意識させる取り組みは重要です。
反対に、経理処理全般や在庫の発注・管理などの作業はいずれの従業員も同様に行えることが望ましいため、標準化に向く業務にあたります。自社製品やサービスに関する説明なども同様の理由から、標準化に向いています。
3‐2. 社員が臨機応変に動けなくなる可能性がある
マニュアルを作成すると属人的なミスが減少する一方、想定外の事態への対応力が低下する可能性もあります。臨機応変な対応が要求される業務ではマニュアルに余白を持たせ、自主的な行動を促すことも重要です。想定外の事態に対して取った従業員の行動は事例集としてマニュアルに追加すると、他の人の参考になります。
従業員の自主的な行動を促すためには、社内の関係者と気軽に連携できるコミュニケーションツールを導入する方法も一手です。従業員の行動の事例集への追加を効率的に行うためには、マニュアル作成ツールを活用すると便利でしょう。
まとめ
業務標準化とは、業務フローや作業のやり方を統一し、誰がやっても同一の品質で無駄なく作業ができるような状況を整えることを指します。業務の標準化を行うと属人化が防げるだけでなく、生産性の向上も期待できます。
業務標準化のために作業をマニュアル化したりフローを作成したりする場合は、クラウドツールなどを活用して効率的に行いましょう。また、マニュアルの改善や臨機応変な対応が必要な状況に備え、コミュニケーションを取りやすくするツールを導入しておくことも有効です。