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【Pharma AI Nexgen-製薬AIネクスジェン-】LLMにおける「ポチョムキン理解」と「ハルシネーション」の幾何学的理解 

December 15, 2025

  • AI
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こんにちは、ファーマ・テック・トランスレーターの石川です。

今回は、私の思考の迷宮から生まれた記事をお届けします。 

私は多様な分野に興味があり、Webに掲載される様々な論文を興味が赴くまま、時々覗いています。そこから私なりに得た知見とそこから得たインスピレーションを皆様と共有できればと考えております。なお、私の個人の見解であり、会社の見解ではないことを最初にお断りしておきます。 

以前に別のコラムでお伝えしたように、「人間は、言語という一次元情報で互いにイメージを伝え、そこから想起される二次元イメージ、三次元イメージ、さらに時間を加えた4次元イメージまでを駆使してコミュニケーションを図っています。」 

逆に、科学的な知見はイメージに置き換えておくと忘れにくく、詳細を思い出しやすくなります。YouTube動画などもクリップしておくと良いと思います。「イメージを幾何学的に表しているのが数式です。」この数式の周辺についてはまた別のコラムでご紹介するつもりです。 


概要 

大規模言語モデル(LLM)の出力品質に関して、「ポチョムキン理解 Potemkin Understanding」と「ハルシネーション hallucination」という2つの問題が指摘されています。これらを多次元テンソル空間における**内挿(interpolation)と外挿(extrapolation)**の問題として捉えると、非常に本質的な構造が見えてきます。 

1. ポチョムキン理解:密な訓練領域内での「表層的理解」 

ポチョムキン理解とは、あたかも意味を理解しているような文を生成するが、実際には文脈や因果関係の深い理解が欠如している状態です。 

  • 幾何学的には:高密度な訓練データ領域内の内挿 
  • 出力は文法的に自然で一貫していても、意味的には浅い 
  • 解決には、構文→意味構造への写像精度の向上が必要です。 

2. ハルシネーション:訓練分布の外側への「意味的飛躍」 

ハルシネーションとは、事実に基づかず、存在しない情報をもっともらしく生成してしまう現象です。 

  • 幾何学的には:学習分布の外側に出たときの外挿 
  • 構文的には整っていても、内容が事実と乖離 
  • 解決には、外部知識との整合性確認や信頼スコアの導入が求められます。 

3. 可視化図:表現空間における出力の分布 

上の図は、LLMの内部表現空間(ベクトル空間)における出力領域のイメージです。 

  • 中心の青い密度領域は、訓練データが豊富に存在する領域です。 
  • → ここでは内挿により、ポチョムキン理解のような出力が生まれる。 
  • 外縁部の赤い点は、訓練データが乏しい領域です。 
  • → ここでは外挿により、ハルシネーションが生じやすくなる。 

4. 今後の示唆 

この幾何学的な枠組みに基づけば、LLM開発において以下の指針が導けます: 

問題 幾何的性質 主な対策 
ポチョムキン理解 内挿 意味理解の強化(Symbolic併用、因果推論の導入など) 
ハルシネーション 外挿 情報源の明示化(RAG)、信頼スコア、事後検証など 

5. おわりに 

このように、ポチョムキン理解とハルシネーションは、単なる振る舞いの問題ではなく、LLMがどの空間上で予測を行っているかという幾何学的問題として整理することで、今後の性能向上に向けた道筋が見えてきます。 

この解説が読者の皆様のLLMの基礎研究や応用開発の理解に役立てば幸いです。 

株式会社ロゼッタ/ファーマ・テック・トランスレーター/石川 博

1979年にサントリー(株)の医薬事業の一期生として入社。製剤研究、医薬品開発や上市申請まで幅広い業務に携わる。その後、第一三共グループ時代にロゼッタのAI精度に感銘を受け、「言葉の壁を取り除く」使命を見出しロゼッタへ入社。現在、AI時代の到来に際して専門知識と経験を活かし、製薬業向け「ラクヤクAI」のサービス・CS向上を推進。言葉と製薬業界の未来を切り開く挑戦を続けている。

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