ビジネスシーンで多用されているPDF(Portable Document Format)。 どのプラットフォームで開いても同じレイアウトで閲覧・印刷できるのが特徴です。
ビジネス文書、印刷物の入稿、論文などで広く利用されているPDFですが、翻訳の際にはネックになることがあります。 今回は、英語のPDF翻訳の悩みを解決するおすすめの翻訳ツールをご紹介しましょう。
※本記事は2020年8月時点の情報を記載しています
目次
コピペできない!レイアウトが崩れる!PDF翻訳が難しい理由
自動翻訳を活用して英語のPDFを翻訳しようと思っても、テキスト翻訳のように簡単にはいきません。その理由は、以下のようなことが挙げられます。
●PDFファイルが保護されている
情報漏洩対策のため、PDFにセキュリティがかけられていることがあります。 この場合、文章をコピー&ペーストで きなくなり、自動翻訳を使って翻訳する際には英文を書き起こさなくてはなりません。
●レイアウトが崩れる
PDFには文字のほかにも表や画像が含まれていることがあり、レイアウトを崩さずに一括翻訳できるツールは限られます。 その中でも、 テキストが重なったり、画像とキャプションが入り混じったり、画像がまるまる削除されたり、 ツールによっては難点もあります。
●余計な改行により翻訳精度が低下
PDFファイルのテキストの行末には、画面上には表示されない改行記号が入っています。 この改行記号を自動翻訳が読み込んでしまうと、意味不明な訳文に。 テキスト翻訳では使える翻訳ツールなのに、PDF翻訳になると著しく翻訳精度が低下してしまうのはこのためです。
●自動翻訳の処理容量が小さい
PDFには高画質の画像やIllustratorで作ったデザインデータが含まれていることが多く、 特に複数ページにわたるものはファイルサイズが大きくなる傾向にあります。 ファイル翻訳に対応する自動翻訳のほとんどは処理容量が決まっているため、容量をオーバーしてしまうとデータの分割や圧縮などの事前処理が必要です。
英語のPDF翻訳におすすめの翻訳ツールの特徴比較
このように一筋縄ではいかない英語のPDF翻訳ですが、いくつかの翻訳ツールは対応しています。それぞれの翻訳ツールの特徴を確認し、ニーズに合った翻訳ツールを試してみましょう。
【Google翻訳】
PDFファイルをオンライン上にアップロードするだけで訳出できる、手軽な無料ツールです。 ただ、画像データの処理はできず、改行による誤訳も発生しやすいのが難点。
部分的な翻訳の補助的なツールとして使用するのが良いでしょう。
【Doc Translator】
一度に10MBまでのPDF翻訳が可能です。 実務で使用するにはデータ量の制限が厳しいものの、レイアウト崩れや改行記号による誤訳も少なく、翻訳後の文章をPDFとして保存することができます。
Google翻訳のエンジンを利用しているため翻訳精度は比較的高いですが、情報漏洩のリスクは残ります。 機密文章を取り扱うビジネス翻訳にはおすすめできません。
【Googleドキュメント】
OCR(Optical Character Recognition)というソフトウェアにより、画像データから文字を認識し、テキストデータに変換してくれます。 しかし、レイアウトはほぼ反映されないため、表の翻訳は難しく、Google翻訳と同様に改行による翻訳精度の低下も見られます。
また、一旦GoogleドライブにPDFをアップロードしなければならず、変換までに多少手間がかかります。
【Microsoft Office Word】
意外と知られていませんが、Microsoft Office Wordを翻訳ツールとして活用することができます。Google翻訳やDoc Translatorのように外部のサーバーを使用しないため、情報漏洩リスクが低いのが最大のメリット。 ただし、PDFをWordファイルに変換する工程が加わります。
【T-4OO】
PDF翻訳では、レイアウトを保持したままWordファイルで出力され、翻訳後のレイアウトの調整や資料の再作成などの手間がかかりません。 また、セキュアな環境で翻訳が行われるため情報漏洩のリスクは皆無に等しく、大切な機密情報が記載されたPDF翻訳におすすめです。
有料のサービスですが、膨大な情報量と複雑なレイアウトを伴うPDF翻訳においては、スピード・翻訳精度・仕上がりとも他の追従を許しません。
※合わせて読みたい記事:PDF・ワードファイルをどうやって翻訳する?コピペを使わず簡単に翻訳する方法
PDF翻訳に求める条件を満たした翻訳ツールを選べば、翻訳業務の効率アップ!
ビジネスにおいて重要な英語のPDFを翻訳する際は、第一に情報漏洩のリスクを念頭に入れ、使用する翻訳ツールを検討しましょう。 その上で、翻訳精度やレイアウトの維持といった機能面に着目してください。
セキュリティ、翻訳精度、仕上がり時のレイアウト品質など、PDF翻訳に求める条件を満たした翻訳ツールを選べば、翻訳業務の効率が格段に向上するはずです。
この記事を書いた人
バイリンガル·ライター大庭有美(オオバ ユミ)
オーストラリア·シドニー在住30年。15年に渡りオーストラリアの日系媒体にて編集ライターおよび翻訳·通訳として活動。グルメ、芸能、インタビュー、育児、イベント、スポーツ関連の記事を主に担当している。