
こんにちは、ファーマ・テック・トランスレーターの石川です。
本日はサーブリッグ分析とAIオーケストレーションシステムの類似性について紹介していきます。
※このコラムでは「生成AI」という場合、弊社親会社・株式会社メタリアル社が開発したLLMオーケストレーション・システム「LLM2」のことを指しています。(本日の主役です!)
AIオーケストレーションシステムの登場
サーブリッグ分析による効率化
皆さんはサーブリッグ分析をご存知ですか。サーブリッグ(Therbligs)とは、F.B.ギルブレイス(1868-1924)が考え出した、職場での動作経済の研究に使用される基本動作のことです。彼曰く、人の動作を分析すると18の基本要素、すなわちサーブリッグ(=動素)に分解できるというのです。
このサーブリッグ(Therblig)という言葉は、発案者の名前であるギルブレイスGilbrethを逆に綴った名称らしいのですが、職場での作業というものを工程ごとにこのサーブリッグ単位を記録して分析し、その分析結果は、不要な動きを排除することによる肉体労働の最適化するために使用する、というのが目的だったようです。
なるほど、細かな要素を組み合わせて一つのものを形作ることがある。つまりその要素を詳しくみていけば、効率化につながるということですね。
AIオーケストレーションシステム:Metareal AI LLM 2
このような複数のものを組み合わせて効率化する例は生成AIの世界にも存在します。
昨年、ロゼッタの親会社であるメタリアル社のCTOである米倉氏の研究から、世に溢れる多様なLLMを用途に応じて活用することができるシステムが生まれました。米倉氏はこれをAIオーケストレーションシステム;Metareal AI LLM 2と命名しています。
私は、この仕組みが私を含むロゼッタのメンバーにまず社内公開され、各自が利用できる環境が整備された際に、いの一番に使ってみました。そして、私自身にとって実用的と考えられるアプリをわずかな時間で作成できたことで、その発想のすばらしさに感動し一番のファンになったのです。
本日はその感動をぜひみなさんにお届けしたいと思います。
すごいぞ!Metareal AI LLM 2!
OS誕生クラスの大事件!?
まずこのMetareal AI LLM 2を触ってみた時に感じた感想の一つが、以下のようなものです。
「これは本格CPU時代の到来で生まれたOSの誕生に相当する大事件ではないか⁉」
OSとは皆さんお馴染みOperating systemのことで、コンピューターのハードウェアとソフトウェアを管理する基本的なソフトウェアです。これがなければ始まらないという基本中の基本で、代表的なOSには、Windows、macOS、Linux、Androidなどがあルコとはみなさんもご存知だと思います。
このOS自体の歴史は一般大衆の手に渡る以前の大型コンピューターの時代、SYSTEM360のころに始まっていますが、ここで言うのはコンピュータの民主化の始まり、1970年代のマイクロプロセッサの誕生以降のCP/M、PC-DOSやMS-DOSなどのOSを指しています。つまり、我々の知っている「あのOS」のことです。
そして、私はMetareal AI LLM 2に触れた時、まさにその「あのOS」が生まれた時ぐらいの衝撃を受けたのです。
シン・OSの誕生
そして、その次に頭に浮かんだ言葉はこのようなものでした。
「そしてこれは、本格LLM時代の到来でもたらされたシン(真)OSの誕生である」
思わず、「シン・OS 」などという聞きなれない言葉を使ってしまいましたので解説しましょう。
こちらの真(シン)OSというのは、米倉氏の発明であるOS(Orchestration system)のことを指しています。先ほどまでのOS(Operating system)とは別物ですが、個人的にはこれが新時代の「OS」になるだろうと思っています。
さらに、私は、これがMixture of expertsの外部化であると解釈できると考えています。Mixture of experts(MoE)は機械学習、特に深層学習の分野で使用されるアーキテクチャおよびモデリング手法で、異なる専門分野を持つ「専門家」のチームのようなものです。各専門家は特定の分野に詳しく、そんな専門家がタッグを組んでいる状態です。オーケストレーションシステムによってMixture of expertsの外部化が可能であるとするならば、正にこれは生成AI時代の真OSとなるポテンシャルを秘めていると考えているのです。
LLMだけではダメ?
2023年以降に広く知られるようになった個々のLLMは実験的用途には十分です。自然言語で指示できるということで個人のちょっとした用途には抜群の柔軟性を発揮してくれます。しかし、実用、つまり業務で使うとなると大きな課題に直面します。
ChatGPTのサブスクリプションでGPTsを作成することを試みられた方はわかると思いますが、実用的な用途に活かそうとなると自然言語であるが故に活用にはそれなりにリテラシ(読み書き能力)が必要になります。
つまり、多様なリテラシを持つ人々が、LLMから同じ品質の出力得るのは難しいのです。
LLMは、以前のコラムにも記載したとおり「仕事を安心して頼める超優秀な人材」に相当します。しかし、再現性のある高品質の仕事をしてもらうには、決められたルールを参照してもらう必要があり、指定されたツールを使用してもらう必要があります。
また、場合によっては他のメンバーとの併行作業や連携が必要になります。まさしくオーケストラの楽器(弦楽器、管楽器、打楽器など)演奏のメタファだと連想します。(上記、以前のコラムにご興味がある方は、ぜひ以下をご覧ください。)
しかし、今後LLMの利用者は全て、ロゼッタ社員のようにLLM2という標準化された楽譜を通して、演奏家として、指揮者として、聴衆として参加することができるようになっていくと考えています。
残った役割である作曲家はロゼッタがお引き受けいします。もちろん作曲家としてこの革命に参加するために作曲システムの導入もご案内可能です。
まとめ
今回はいつもより熱く語ってしまいましたね。
ちなみに私は、大学生のころに物理化学実習でカード穿孔機でキーパンチし、FORTRANでソフトウェアを作って以来のコンピュータオタクです。社会人になるころにはPC-8001が発売され自宅でプログラミングできる環境を整備し、実験データの処理なども自作プログラムで扱うようになりましたが、あっという間に汎用のビジネスアプリが普及し自らプログラムを組む機会はなくなりました。その後、GUIの発達でMacintoshに乗り換えました。
そうして時代の流れとともに、新技術の波に乗り続けてきた私ですが、今また、LLMによる革命が起こり、その社会実装に参加できることにとてもわくわくしています。
AIの応用で具体的な課題とお持ちであれば、ぜひロゼッタ、メタリアルにお問い合わせいただければ幸いです。
ではまた次回お会いしましょう!

株式会社ロゼッタ/ファーマ・テック・トランスレーター/石川 博
1979年にサントリー(株)の医薬事業の一期生として入社。製剤研究、医薬品開発や上市申請まで幅広い業務に携わる。その後、第一三共グループ時代にロゼッタのAI精度に感銘を受け、「言葉の壁を取り除く」使命を見出しロゼッタへ入社。現在、AI時代の到来に際して専門知識と経験を活かし、製薬業向け「ラクヤクAI」のサービス・CS向上を推進。言葉と製薬業界の未来を切り開く挑戦を続けている。
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