OpenAIが2024年12月に開催した「12 Days of OpenAI」は、生成AI業界に大きな衝撃を与えた一大イベントでした。クリスマスソング「12 Days of Christmas」にちなんで名付けられ、12営業日連続で新機能や新サービスが発表されたのです。
本記事では、12日連続で発表された内容をまとめて解説します。大小さまざまなスケールの発表が行われたので、情報を見逃さないように最後までご覧ください。
Day 1: OpenAI o1とChatGPT Proプランのリリース
初日となる2024年12月6日には「OpenAI o1」モデルのリリースと「ChatGPT Pro」プランが発表されました。
OpenAI o1は、従来のプレビュー版から画像認識機能を搭載し、回答速度が50%向上。重大なミスのリスクも34%減少しました。画像認識機能が搭載されたことにより、活用の幅が大きく広がったといえます。
また、ChatGPT Proプランは月額200ドルで提供され「o1 Pro」と呼ばれる高性能モデルを無制限で利用可能です。通常のモデルが数秒で回答を生成するところを、最大4分かけて深い思考を行い、より正確な回答を導き出します。
詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
OpenAIが『OpenAI o1』 &『ChatGPT Pro』をリリース!概要や利用料金等を解説!
Day 2: 強化学習型ファインチューニングの提供開始
2024年12月7日、Day 2ではAIに人間のような学習能力を持たせる「強化学習型ファインチューニング」への参加受付が開始されました。ファインチューニングとは、既存のAIモデルに特定分野のデータを追加で学習させ、専門的な能力を持たせる技術です。
従来のファインチューニングが数万件のデータを必要としたのに対し、数十から数千件程度の少量データで効率的な学習を実現できるようになりました。
医療分野では希少疾患の診断支援に活用され、約1,100件の症例データから患者の症状と原因遺伝子を特定するAIモデルの開発にも成功しています。
詳しく解説した記事を読みたい方は、以下の記事をご覧ください。
OpenAIが強化学習型ファインチューニングの参加受付開始!「強化学習型ファインチューニング」ってなに?
Day 3: 動画生成AI「Sora」の一般提供開始
2024年12月10日、Day 3では動画生成AI「Sora Turbo」の一般提供開始を発表しました。テキストや画像から最長20秒のHD動画を生成し、1080pの高画質出力に対応します。
生成速度は従来比で3倍に向上し、480p動画なら約5秒、1080p動画でも約2分で生成が完了。「Storyboard」機能によりタイムライン上での動画生成と編集が可能です。また、生成されたAI動画には、AIによって作られたことを証明する電子署名(C2PA形式のメタデータ)と、目視でも確認できる透かしが自動的に付与されます。電子署名により、動画が本物かどうかを確認でき、著作権保護やフェイク動画対策に役立ちます。ChatGPT PlusとProユーザーは追加料金なしで利用可能です。
詳しく解説した記事を読みたい方は、以下の記事をご覧ください。
OpenAIがついに動画生成AI「Sora」を正式リリース!利用方法や料金、特徴を解説
Day 4: Canvas機能の全ユーザー解禁
2024年12月11日、Day 4では有料プラン限定だったCanvas機能が全ユーザーに開放されました。WordやGoogleドキュメントのように文章やコードをリアルタイムで修正できます。
また、Python限定でCanvas内からコードの直接実行も可能になりました。実行時のエラーメッセージをもとにしたバグ修正機能も追加されたため、プログラミング学習や開発作業が大きく効率化するでしょう。
GPTsを作成する際にもCanvas機能が利用可能となり、さまざまな場面で有効活用できるようになりました。
詳しく解説した記事を読みたい方は、以下の記事をご覧ください。
OpenAIがCanvas機能を全ユーザーに開放!Canvasって何?従来のCanvasと何が変わった?
Day 5: AppleデバイスとChatGPTの連携開始
2024年12月12日、Day 5ではApple IntelligenceとChatGPTの連携が発表されました。iOS 18.2以降のiPhone、iPad、Macで、SiriからChatGPTにアクセスできるようになったのです。
また、iPhone 16のカメラ機能と連携する「Visual Intelligence」モードでは、撮影した対象物について直接質問が可能です。観光地での建造物の解説や料理のレシピ提案など、さまざまな場面での活用が期待できます。
詳しく解説した記事を読みたい方は、以下の記事をご覧ください。
Apple×OpenAIでスマホが変わる!SiriからChatGPTを直接利用可能に
Day 6: Advanced Voice Modeがビデオ通話に対応
2024年12月13日、Day 6ではChatGPTのリアルタイム会話機能「Advanced Voice Mode」にビデオ通話と画面共有機能が追加されました。カメラを通じて映像を取り込み、リアルタイムで状況を理解しながら会話が可能です。
例えば、ChatGPTに手元の映像を見せながら、料理のレシピ指導やDIYの手順説明、パソコン操作の説明など、視覚的なサポートが必要な場面で活用できます。教育分野では、生徒が数学の問題を見せながら質問したり、実験の様子を撮影しながらアドバイスを受けたりもできるでしょう。
クリスマス期間限定で50か国語に対応する「サンタモード」も実装され、OpenAIの遊び心ある一面も印象的でした。
詳しく解説した記事を読みたい方は、以下の記事をご覧ください。
OpenAI、ChatGPTアシスタントに”目”を与える!Advanced Voice Modeがビデオ対応へ
Day 7: Projects機能の発表
Day 7となる2024年12月14日、ChatGPTにチャットやファイル、カスタム指示を整理できる「Projects」機能が実装されました。フォルダのように情報を管理でき、PDFやExcelなど各種ファイルをアップロードして一元管理が可能です。
プロジェクトごとにChatGPTへの指示も設定でき「日本語で回答」「コードにはサンプルを含める」など、具体的な指示を記録できます。Web検索やCanvas機能もプロジェクト内で使用できるため、作業効率が向上するでしょう。Projects 機能は、ChatGPT Plus、Pro、Teamユーザーで先行利用が開始されました。
詳しく解説した記事を読みたい方は、以下の記事をご覧ください。
OpenAI、ChatGPTに「Projects」機能を追加—チャットの整理とカスタマイズが可能に
Day 8: 検索機能の無料提供と機能強化
Day 8となる2024年12月17日、ChatGPTの検索機能が無料ユーザーにも開放され、機能も大幅にアップデートされました。検索結果の表示速度が向上し、優先度の高いWebページが上位に表示されるようになったのです。
モバイルアプリ版では地図サービスとの連携を実現し、Apple MapsやGoogle Mapsで店舗やスポットの位置情報を確認できます。Advanced Voice Modeとの統合により音声検索も実現したため、観光情報や天気予報など自然な会話でリアルタイムの情報を入手できます。
詳しく解説した記事を読みたい方は、以下の記事をご覧ください。
OpenAI、ChatGPTの検索機能をアップデート!さらに無料ユーザーにも提供開始
Day 9: o1 APIの一般公開と開発者向け機能の強化
Day 9となる2024年12月18日、「Mini Dev Day」と題して開発者向けの機能が強化されました。具体的には、最新モデル「o1」のAPIが開発者に公開されたり、画像を理解して応答できる機能が追加されたり、データを構造化して出力するJSON形式への対応が実現しました。
音声関連では、WebRTC技術(ウェブブラウザやアプリで音声や映像をリアルタイムにやり取りする技術)を導入し、ビデオ通話並みの速度で会話できる音声APIを実現。利用料金も60%削減され、開発コストを抑えられるようになりました。
Day 9では他にもさまざまな発表がありました。詳しく解説した記事を読みたい方は、以下の記事をご覧ください。
OpenAI、ChatGPT o1のAPIを一般公開!開発者向けに発表された「Mini Dev Day」の概要を解説!
Day 10: 電話とWhatsAppからのChatGPT利用開始
Day 10となる2024年12月19日、電話でChatGPTと会話できるようになりました。アカウントやアプリのインストールは不要で、毎月15分まで無料通話が可能です。古い携帯電話や固定電話からも利用でき、インターネット環境がなくてもAI機能にアクセスできます。
また、メッセージアプリ「WhatsApp」を利用して、ChatGPTを利用できるようになりました。電話番号があればログイン不要で誰でも無料利用できます。
ただ、電話でのChatGPT利用は、現時点で米国のみの提供です。詳しく解説した記事を読みたい方は、以下の記事をご覧ください。
【OpenAI】ChatGPTが電話に出る時代?ChatGPTが電話とWhatsAppに対応
Day 11: Mac版ChatGPTの大規模アップデート
Day 11となる2024年12月20日、Mac版ChatGPTアプリが大幅にアップデートされました。BBEdit、MatLab、Warp、Xcodeなどのプログラミングツールや、Apple Notes、Notion、Quipなどの文書作成ツールとChatGPTが連携したのです。
コードの自動生成やエラー指摘、デバッグのサポート、文章の校正や改善提案が可能になり、Option+Spaceキーで簡単に起動できます。2025年初頭にはWindows版も同様の機能を搭載予定です。
詳しく解説した記事を読みたい方は、以下の記事をご覧ください。
OpenAI、Mac版ChatGPTアプリに新機能追加—BBEditやMatLabなどのアプリと連携
Day 12: 次世代モデル「o3」と「o3-mini」の発表
「12 Days of OpenAI」最終日となる2024年12月21日、数学やプログラミングで人間の専門家を上回る性能を持つ次世代モデル「o3」と「o3-mini」が発表されました。o3は未発表の数学問題で構成された「Frontier Math」で25.2%の正答率を達成し、従来モデルの2%を大きく上回りました。
AGI(人間のように多様な問題を解決できる汎用人工知能)の能力を測る「ARC-AGI」ベンチマークでは87.5%のスコアを記録し、人間の平均値85%を超えています。
o3-miniは、o3の小型版として開発された効率重視のモデルです。「低・中・高」の3段階で思考時間を設定でき、問題の複雑さに応じて適切な処理時間を選択できます。「mini」と名付けられてはいますが、低い設定でもo1-miniを上回る性能を発揮し、中程度の設定ではo1本体と同等の結果を出せるという高性能モデルです。
両モデルとも2025年1月末からの提供開始が予定されています。詳しく解説した記事を読みたい方は、以下の記事をご覧ください。
【OpenA】「12 Days of OpenAI」最終日に「o3」と「o3-mini」を発表—AGIに最も近いAIモデルが誕生
まとめ
2024年12月6日から始まった「12 Days of OpenAI」では、下記の新機能やアップデートが発表されました。
- Day1:最新モデル「o1」正式リリースとChatGPT Pro(月額200ドル)発表
- Day2:強化学習型ファインチューニング機能の実装
- Day3:動画生成AI「Sora」の正式リリース
- Day4:Canvas機能の全ユーザー開放と機能強化
- Day5:Apple製品との完全統合を発表。iPhoneやMac、iPadでSiriを通じてChatGPTを利用可能に
- Day6:Advanced Voice Modeにビデオ機能を追加
- Day7:Projects機能の追加。チャットの整理とカスタマイズが可能に
- Day8:検索機能の大幅強化。リアルタイムの情報へのアクセスを改善
- Day9:開発者向け機能の強化。アプリケーション開発がより簡単に
- Day10:電話とWhatsAppを通じたChatGPTの利用が可能に
- Day11:Mac版ChatGPTアプリがBBEditやMatLabなどのアプリと連携可能に
- Day 12:次世代モデル「o3」「o3-mini」の発表
大小さまざまな発表がありましたが、これだけビッグなニュースを12日連続でやってのけるとは「さすがOpenAIだな」と感じました。
昨今のAIの進化は早すぎて追いつけないほどで、2025年にはさらに多くの機能が公開されるでしょう。また、競合企業もさまざまなサービスやAIモデルを発表することが予測されます。
ChatGPTの進化のみならず、世界中のAIがどこまでの進化を遂げるのか、今後の世界の動向に注目しましょう。
AIメディアライター・植田遊馬
Webライター歴4年目。ChatGPTの登場で生成AIの可能性に衝撃を受け「生成AIオタク」に。さまざまな生成AIを駆使しながらライター業を営む傍ら「多くの人に生成AIの魅力を伝えたい!」という想いで、生成AI系メディアでの記事執筆を行っている。
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