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【インタビュー記事】製薬業界の文書作成業務が圧倒的にラクになる!「ラクヤクAI」が創薬に与えるインパクト 

February 07, 2025

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株式会社ロゼッタ(以下、ロゼッタ)が現在開発中の「ラクヤクAI」は、大量の専門文書を作成する必要がある製薬業界の業務効率化を実現することが期待されるツールです。複数のLLM(大規模言語モデル)を組み合わせることで専門性の高い文書を自動生成できる業界特化型生成AIシステム「Metareal AI LLM 2」を活用してPRT(治験実施計画書)やCSR(治験の総括報告書)といった製薬業界特有の専門文書の生成や整合性チェックが可能となります。 

今回はロゼッタAI事業部の松田太郎さんに、「ラクヤクAI」の特徴と、製薬業界の文書作成業務への貢献についてお話をうかがいました。 

「ラクヤクAI」はドキュメントの側面から新薬開発をサポートする 

――「ラクヤクAI」は生成AIを活用した製薬業の企業向けのツールだとうかがっています。生成AIは今やさまざまな業界や企業で活用されていますが、製薬業界における需要はどのようなところにあるのでしょうか? 

松田:製薬業界に限らず、ヘルスケア領域における生成AIへの関心は非常に高いものがあります。中でも製薬業界は薬剤の研究段階から、薬事承認後に至るまでさまざまなドキュメントを作る必要があります。そのドキュメント作成の部分で生成AIを活用することで、大幅な業務効率化ができると考えています。 

――ドキュメントとは具体的にどのようなものを指すのでしょうか。 

松田:ほんの一例ですが、PRT(治験実施計画書)やCSR(治験の総括報告書)といった治験関連文書や、新薬のプロモーション資料などの専門文書です。「ラクヤクAI」は、こうした文書の作成のところで、メディカルライターの業務をサポートするツールとして開発しています。 

――「ラクヤクAI」は製薬業界特有のドキュメント作成にまつわる業務をどのように効率化しうるのでしょうか? 

松田:製薬会社様の社内にあるさまざまな文書やデータ、また社外で公表されている論文やガイドライン、規制などの文書を活用した文書の自動生成、文書間の整合性のチェック、薬剤情報の検索といった、ドキュメントを作成する時に必要な作業が丸ごとできるプラットフォームを目指しています。 

ここの部分の業務スピードを改善できたら、結果的に製薬会社様が開発した新薬が承認されるまでの期間も短縮できることになります。ドキュメントという側面から製薬会社様の新薬開発をサポートしていこう、というのが「ラクヤクAI」の狙いです。 

業界特化型生成AIシステム「Metareal AI LLM 2」で専門文書の自動生成が可能に 

――専門性の高い文書を自動で作ってくれるというのはすごい機能ですが、なぜそのようなことができるのでしょうか? 

松田:今年の4月に弊社がリリースした業界特化型生成AIシステム「Metareal AI LLM 2」がその秘密です。これはバックエンドで複数のLLM(大規模言語モデル)をオーケストレーションさせる仕組みになっていて、文書を要約したいとか、データから文書を生成したいといったタスクに対して、そのタスクに強みのある最適なLLMを連動させて回答を生成していきます。 

これによって、製薬業界の例でいうならCSRの自動生成といったことが可能になります。こちらが実際にCSRを自動生成しているところの映像です。 

――見出しや文章だけでなく、簡単な表のようなものもものすごいスピードでアウトプットされていきますね! 

松田:CSRは構成上、章や項番ごとに生成する文章の内容が異なり、治験で得られたデータをそのままペーストして使える章もあれば、多少の編集が必要な章もあります。要約しなければいけない章もありますし、第11章と第12章の安全性や有効性についての章、総括についての章は執筆しないといけません。 

つまり、章ごとに求められるタスクが違うわけですが、「Metareal AI LLM 2」ではそのタスクごとに適したLLMを組み合わせて文書を生成していくので、専門性の高い文書でも精度の高いアウトプットが可能になります。 

――現在は開発中とのことですが、今後どのような形で製品としてリリースする予定ですか? 

松田:治験の実施期間における治験文書・資材の自動生成ツール、文書作成後のクオリティチェックのための整合性チェックツール、薬事承認後に使えるプロモーション資材の生成ツール、発売後は薬剤情報やナレッジの検索ツール、モニタリングツールと、製薬のあらゆるフェーズで活用できるツールを順次リリースしていく予定です。また、約6000の企業様・団体様にご導入いただいている「T-4OO」というAI自動翻訳ツールで、必要に応じて文書を他言語に翻訳していただくことも可能となる予定です。 

――製薬の各工程に向けたツールを個別にリリースして、最終的にすべての工程で活用できるプラットフォームになるということですね。文書の自動生成というお話がありましたが、「ラクヤクAI」で生成した文書はそのまま配布したり提出したりといったことができるのでしょうか? 

松田:ここはご留意いただきたいのですが、AIに100%はありません。生成AIが行った作業は必ず人間のチェックを入れる必要があるという点はご理解いただきたいです。 

 

文書作成にまつわる製薬業界の悩みとは? 

――開発する過程で製薬会社の方々にお話を聞く機会があるかと思いますが、製薬の現場からは「ラクヤクAI」でカバーできる業務についてどのような要望が多いのでしょうか? 

松田:やはり治験関連文書ですとか、薬剤のプロモーション資材の作成についてのご要望が一番多いです。特にCSRを自動生成できないかというご要望ですね。 

こちらにつきましては、実はもうプロトタイプが完成しておりまして、現在は精度の向上や細かい部分のチューニングに入っている段階です。近い将来「バージョン1」がプロダクトとしてできあがる予定です。 

――もうリリースが近いものもあるんですね!CSRや薬剤のプロモーション資材向けの文書の生成をすべてこなせるといったツールになるのでしょうか? 

松田:いえ、CSRなどの治験関連文書やプロモーション資材など、文書によってフォーマットが異なるので、現状は作成したい文書ごとに別々のツールになると考えています。イメージとしては「文書の自動生成ツールCSR版」「プロトコル版」といった形のリリースの仕方になるのではないかと思います。 

――また文書間の整合性チェックも、人間の手でやると膨大な手間のかかる作業です。こちらもAIがやってくれるようになれば業務効率は高まると思いますが、開発の状況はいかがでしょうか? 

松田:最終的には今お話しした文書の自動生成ツールと連動してご利用いただくことを想定しているのですが、現状では別々のツールとして開発しています。こちらもプロトタイプはできていて、今後はお客様のご要望を上乗せしてカスタマイズしていくというフェーズになっています。 

こちらは作成済の文書と、その文書を作成する際に引用した文献やファイルの間の整合性が取れているかをチェックするツールになります。作成済の文書に入れるべき情報がきちんと入っているか、使っている数字がまちがっていないか、引用元URLの中身がまちがっていないかといったことをAIが探知して、不整合やまちがいがあればリマインドを出してくれる、といったイメージですね。整合性チェックも文書の自動生成と並んで製薬業界の企業様からのご要望が多い業務でして、すでに発注をいただいている企業様があり、受託開発が始まっています。 

複数のLLMを使用することによるデータ流出のリスクは? 

――開発中から受注があるというところで製薬企業側の関心の高さが伺えますね。モニタリングツールの方も開発中かと思いますが、こちらはどういった機能があるのでしょうか? 

松田:こちらはですね、MRの方の業務日報や医師の方の講演会の資料、あるいは講演会での実際の発言といったものが、販売情報提供活動のガイドラインや法令、規制に照らして虚偽表現、誇大表現、競合他社製品との比較表現や誹謗中傷などが含まれていないかをチェックするツールとなります。 

基本的な要素技術は文書間の整合性チェックのツールと同じなのですが、モニタリングに特化したナレッジデータを元に回答を生成していくといった特徴があります。企業様のコンプライアンス関連の部署の方に使っていただくことを想定しています。 

――薬剤情報やナレッジの検索ツールについても教えていただきたいです。 

松田:ナレッジ検索と言いますと汎用的な生成AIの仕事と思われがちなのですが、「ラクヤクAI」で提供するナレッジ検索は、「検索の利便性の向上」と「活用しやすい形」での検索結果の抽出」が特徴になります。 

よくあるような医薬品情報検索サイトを例に出しますと、使い慣れている方はそこまで苦にはならないのですが、検索前の条件設定ですとか、検索方法のところで手こずってしまうことがままあります。また、検索後に薬剤名が一覧表示されるまではいいのですが、添付文書を見たかったらいちいちHTMLをクリックしたりPDFを開いたりしないといけなかったりする。 

また、製薬の過程で他社の類似薬を調べたいというケースを考えてみましょう。検索をかけたら、複数の薬剤が検索結果として出てきます。でも、それぞれの薬剤の「薬効分類」や「効果効能」といった、ある特定の要素だけを横並びにして比較することは現状できません。「ラクヤクAI」のナレッジ検索ツールは、現状医薬品情報検索サイトの使い勝手の悪さや活用のしにくさを解消したツールになる予定です。 

また、このツールとは別なのですが、製薬業界のコンプライアンスに特化したナレッジ検索ができるツールも開発予定です。 

――最後になりますが、「ラクヤクAI」のセキュリティ要件はどうなっていますか? 

 
松田:冒頭でもお話ししましたが「ラクヤクAI」は「Metareal AI LLM 2」という複数のLLMを組み合わせた生成AIシステムを使用しています。ですからセキュリティ要件はそれぞれのLLMのリリース元企業の要件に準拠する形となります。 

ただ、弊社は「Metareal AI LLM 2」で使用しているLLMに関しては、すべてデータの二次利用や再学習は一切なしという条件で商業利用の契約を交わしておりますので、セキュリティについてはご安心いただければと思っています。 

――データの流出や転用には細心の注意を払っているということですね。今日はお忙しいところありがとうございました! 

フリーライター・翻訳者 山田洋介

1983年生。出版系ニュースサイト「新刊JP」で活動するかたわら、公的機関で翻訳者、外国語校閲者としても活動中。使用言語は英・西・亜。

製薬業界で生成AIを活用する「ラクヤクAI」

「ラクヤクAI」は、治験関係書類や添付文書といった社内外の膨大なデータを活用し
製薬事業のあらゆるシーンを効率化する専門文書AIサービスです。
基礎研究から製造販売後調査まで、多岐に渡る製薬業務の中で取り扱われる
様々な文書の作成・チェック作業を自動化し、圧倒的な業務スピード改善を実現します。

「ラクヤクAI」ご活用シーン(例):

  • 治験関連文書やプロモーション資料の自動生成
  • 作成資料のクオリティチェックや、資料間の整合性チェック
  • 講演内容(資料・音声)の適用外表現モニタリング
  • 薬剤情報やナレッジの検索・調査

その他、個別カスタマイズが可能な生成AI環境で、
社内の知見を統合的に分析・集約したアウトプットをセキュアな環境をご提供します。

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