近年、医療DXやAIについて関心が高まるなかで医療AIのメリット・デメリットについて疑問をもつ方がいるのではないでしょうか。
医療AIを活用することで、業務効率や医療の質の向上が期待できますが、活用方法を誤るとデメリットにつながるケースもあります。
本記事では、医療AIのメリット・デメリットや、医療現場における活用事例を解説します。院内スタッフの業務効率や患者さんの診療効率の向上に向けて、医療AIを有効活用しましょう。
医療AIの動向
医療AIとは、画像による診断や機械的な学習、言語処理などのノウハウを医療の領域に応用し、診療効率・治療技術の向上を目指す取り組みです。
厚生労働省が2017年に発表した「保健医療分野におけるAI開発の方向性について」では、医療AIの実用化を検討すべき領域として、以下の6つが挙げられました。
- ゲノム医療
- 画像診断支援
- 診断・治療支援
- 医薬品開発
- 介護・認知症
- 手術支援
2020年には、医療AIの普及に向けて「保健医療分野AI開発加速コンソーシアム」を設置し、AI活用に向けた具体的な工程表が作成されました。
さらに内閣府が発表した「令和6年度概算要求におけるAI関連予算について」では、リスク対応やAIの利用促進、AI開発力を強化するための施策が発表されています。
令和4年度の診療報酬改定では「画像診断管理加算3」の施設基準に対し、人工知能技術を活用した画像診断補助ソフトウェアの管理に関する要件が追加されました。
このように、医療現場におけるAIの利用促進は進み、さらなる発展が期待されています。
医療現場のAI活用事例
医療現場におけるAI活用事例を解説します。おもな事例は以下のとおりです。
医療画像AI診断
AIを活用した画像診断をおこなうことで、より精度を高め、ヒューマンエラーを防止できる効果が期待できます。
画像診断で活用される例としては、以下のとおりです。
- 病理画像
- 超音波画像
- 内視鏡画像
- 放射線画像
- 眼底検査画像
- 皮膚疾患画像
上記の診断をAIが代行することで、医師の診断時間が削減できます。また、医師による診断に加え、AIを併用することでダブルチェックが成立し、疾患の見逃しを防ぎやすくなる効果も期待できます。
AIオンライン診断
AIによるパソコンやスマートフォンなどを介した診断を進めることで、遠隔地にいる患者さんや感染症などの影響で来院しにくい患者さんの治療をサポートすることが可能です。
診断時には、AIを搭載したカメラが患者さんの病状を分析したり病名を予測したりします。得られた分析結果をもとに医師が治療を進められるのが特徴です。
また、AIを活用した問診を併用することで、従来発生していた患者さんへのヒアリング時間が短縮され、業務効率の改善が期待できます。
診断器具へのAI搭載
AIを搭載した診断器具を活用することで、診療効率の向上が期待できます。たとえば、AIを搭載した聴診器では、呼吸音や心音の異常を自動的に検知することが可能です。
また、AIを搭載した内視鏡では、炎症やがんの部位を自動的に検出できます。さらに、AI搭載したロボットを併用することで、手術支援が実現し、医療の質の向上や医療従事者の業務効率向上が期待できます。
AI処方
AIを活用して処方することで、患者さんの体調や体重、血圧などの過去データを瞬時に分析することが可能です。
これにより、従来発生していた診察の時間が削減でき、医師の業務効率向上が期待できます。
AIを活用した処方チェックや薬剤の推奨、服薬指導や調剤ロボットの活用などが期待されています。
AI創薬
AIを活用し、医薬品を作り出すことで開発スピードが向上し、コスト削減にもつながります。また、製品化までの工数が削減でき、新薬の製造期間も短縮されます。
コスト削減が実現できれば、製薬業界における企業の負担が減り、さらなる新薬の研究・治験・開発へ取り組めるようになるでしょう。
今後もAIを活用し、ビッグデータを用いた医薬品開発やがんワクチンの開発、創薬に必要な分子設計の自動化などが期待されています。
医療AIのメリット
医療AIを導入することで、医師や看護師、患者さんにまでメリットが生まれます。具体的なメリットの内容は以下のとおりです。
医療従事者の業務効率化
医療現場でAIを活用することで、診断や事務作業などの医療従事者の業務が効率化されます。
治療時には、患者さんの病歴や検査結果をAIが自動解析することで、より円滑に診断や治療が進みます。また、AIを活用してレセプト業務や受付業務を自動化すると、他院への患者さんの紹介業務といった事務職員の業務負荷が軽減できるでしょう。
業務効率の向上にともない、人件費の削減も期待できるため、経営メリットにもつながります。
診断精度の向上
AIを活用した診断を進めることで、膨大な医療データを瞬時に分析し、診断精度を高める効果が期待できます。
たとえば医師がリスク因子や異常パターンを見落としたとしても、AIがバックアップし、解析することで、ヒューマンエラーを防止することが可能です。
また、疾患の早期発見や早期治療につながるため、医療の質の向上にもつながります。
地域における医療格差の是正につながる
AIを活用したオンライン診断や治療をおこなうことで、医療資源の乏しい地域や遠隔地にいる患者さんも治療が受けられるようになります。
そのため、医療機関が少ない地域で起きていた医療供給不足が改善され、格差の解消が期待できるでしょう。
医療格差が解消されれば、患者さんの生活の質の向上にもつながります。
医療AIのデメリット
医療AIには、メリットだけでなくデメリットもあります。医療現場での活用を考えている方は、リスクを踏まえたうえで検討してください。
大量の症例データの管理が必要
AIが医療現場で適切な判断をおこなうためには、大量の症例データのインプットが重要です。
また、症例データには患者さんの個人情報が含まれているため、流出がないようデータ管理を適切におこなう必要があります。情報が外部に漏れないよう、特定のスタッフだけに共有するよう制限したり、データのパスワード化などをおこなったりして対策することが大切です。
責任の所在が不明瞭
AIを活用した診断や治療のサポートをおこなう場合、責任の所在に関して医師が負うべきかが難しいケースがあります。
そのため、AIの活用を前提とした医療行為に関しては、医師による最終的な診断が可能な環境の整備・構築が必要です。
あくまで医療AIは補助ツールであることを認識し、適切かつ効率的に活用することを念頭に置きましょう。
導入コストや時間的コストがかかる
医療機関にAIを導入する場合、導入費用や維持費用、カスタマイズ費用などが発生する可能性があります。また、上記にともなう作業や、院内スタッフへのレクチャーなどで時間的なコストも発生します。
導入時には費用対効果を考慮し、長期的なスパンで計画的に運用を進める必要があるでしょう。
ラクヤクAIで効率的なインプットへ
AIは、製薬業界でも今後活用が見込まれるツールです。しかし、具体的なツールの選定が難しいと感じることもあるでしょう。
製薬業界向け生成AIソリューション「ラクヤクAI」は、膨大な情報資源に基づく精密なインプットをおこない、創薬における文書・資料の自動生成や、薬剤情報・ナレッジ・ノウハウの検索をサポートします。また、完成した資料の整合性チェックをおこなうことで、ヒューマンエラーを未然に防ぎ、業務効率化につなげます。
ラクヤクAIを活用し、創薬事業における膨大な時間や労力を削減し、高精度かつスピーディーなアウトプットにお役立てください。
医療AIの利活用で医療現場の業務効率化へ
医療現場でAIを活用することで、画像診断やオンライン診断、処方や創薬などの効率化につなげることが可能です。
また、医療従事者の業務効率化や、医療の質の向上などが期待できます。一方で、AIにインプットさせるためのデータ管理や責任の所在、導入コスト・時間的コストの問題が挙げられます。
医療AIの導入を検討する場合は、費用対効果を考慮し、患者さんのデータの管理方法や責任の所在などを明確にすることが重要です。
自院の運用や課題を解決するために、必要なAIを導入し、院内の業務効率化や患者さんの治療に活かしましょう。
医療ライターゆし
大手医療機器メーカー(東証プライム市場上場)にて10年間営業職を経験したのち、現在は医療専門Webライターとして活動中。大手医療系オウンドメディアや医療機関のホームページなどで多くの医療SEO記事・症例/疾患記事・取材記事・LP制作に携わっている。
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