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生成AIを活用した金融機関向け文書チェックサービスが登場。文書チェックはAIが行うべき? 

December 23, 2024

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金融機関が扱っている金融商品に関する書類は、さまざまな法令や規制などをクリアして発行されています。また、広告物に関する規制も比較的厳しい業界です。こうした書類や広告物をチェックするためには、専門的なスキルを身に付ける必要があります。 

先日、こうした課題をテクノロジーで解決すべく、生成AIで支援するサービスが登場しました。今後はこの文書チェックにおける生成AIなどのシステムの利用・活用が期待されます。 

そこでこの記事では、金融機関の文書チェック作業において生成AIを導入するメリットや、課題を解決し得るサービスなどを紹介します。今後の業務負荷軽減策を検討する際のヒントにしてはいかがでしょうか。 

金融機関における文書や資料、文書チェックの課題 

金融機関にはさまざまな専門性の高い文書や資料が存在します。そのため、文書に関する課題は比較的多いと言えます。そこでまずは、金融機関の文書や資料、文書チェックにおける主な課題について説明しましょう。 

紙媒体の資料が多い 

昨今はさまざまな業界・業種でペーパーレス化が進んでいるものの、金融機関は紙文化が根強く残っている業界のひとつとされています。

稟議書やレポート、各種報告資料の回付、人事考課表などを紙ベースでやり取りしている金融機関は未だに多いのが実情です。 

例えば、コロナ禍真っ只中でペーパーレスが注目されていた2020年7月に、あるIT企業が実施した地方銀行の書類電子化に関する調査を実施しました。これによると、融資申請書類をはじめとする書類の電子化状況について、すべて紙の書類を使用している地方銀行は10.6%、一部は電子化しているものの、紙の書類を多く使用している地方銀行は37.5%でした。 

紙の資料は電子データと比較して検索性や分析性に優れず、チェック作業の効率も低くなります。加えて、書類紛失や該当資料を探す手間、情報共有のしづらさなど、紙の資料にはさまざまなデメリットがあります。 

文書に関するガイドラインが厳しく、チェック項目も多い 

顧客の資産を取り扱う金融機関が発行する販促物や広告物などの資料は、とくに厳しいガイドラインに基づいて作成する必要があります。例えば、セミナーに関する表示に関して、日本証券業協会の協会員は「“金融商品取引契約の締結の勧誘”を行う場合には、『金融商品取引を誘引する目的がある旨』を明確に表示する必要がある」と定められています。  

資料を受け取る側としては、信頼性の高い情報を得られるというメリットがあるわけですが、資料を作成する金融機関側としては、確認項目が多く、チェック作業に多くの時間と労力がかかってしまいます。 

専門性の高さゆえに属人化しやすい 

金融機関における文書チェック作業には、各種ガイドラインへの対応や相応の金融知識や判断力が求められます。その専門性の高さゆえに人員のローテーションが起こりにくく、特定の担当者に特定の文書チェック作業を依存するような「業務の属人化」が起こりやすくなるのが課題のひとつです。 

業務が属人化してしまうと、その担当者が不在時に業務が遅滞しやすく、業務効率が低下します。また、万が一その担当者が休職・離職した場合には、一時的に業務がストップしてしまう事例も散見されます。こうしたリスクに対して備えておく必要があるでしょう。 

金融機関の文書チェックに対する生成AI導入のメリット 

こうした金融機関の文書チェックが抱える課題に対し、既存のITサービスではなかなか対応ができませんでした。文書データの形式や内容が多岐にわたることや、チェックすべき観点が多様であることが、主な理由として挙げられます。 

しかしこれらの理由をカバーし、文書チェックに関する課題を解決する手段として、生成AIが注目され、既に生成AIを活用したサービスも登場しています。生成AIの活用は、金融機関の文書チェックにどのようなメリットをもたらすのでしょうか。 

正確性の担保、向上 

専門スキルのある人間の目に加え、生成AIにも文書チェックをしてもらうことで、ヒューマンエラーを防ぎ、正確性を担保・向上させることが期待できます。 

文書チェックに限らず、人間が介在する業務においては、ヒューマンエラーを完全に避けるのは難しいです。また、担当者の知識や経験が乏しいほど、さまざまなミスが起こりやすくなります。 

もちろん生成AIにチェック作業を担ってもらったとしても、ミスをゼロにすることは難しいでしょう。ただし、人が見落とした誤りを生成AIが検出するなど、生成AIの機能を活用した“合わせ技”を使えば、より正確に文書チェックができる可能性は高くなると考えられます。 

従業員の業務効率化の促進 

人の手による文書チェック作業は、法令や各社ごとの規定・ルールを調査しながら進めなければなりません。ときに調査作業や過去事例の確認などが、作業の大半を占めることもあるでしょう。 

その点、生成AIに文書チェックに関連する情報を掲示してもらうことで、この調査プロセスを大幅に削減することが可能です。結果的に従業員の文書チェック作業を大幅に効率化させることができるでしょう。 

業務の属人化や人材不足の解消 

前述の通り、各種ガイドラインや法令、金融に関する知識が求められる文書チェック作業は専門性が高いため、なかなか人材を採用できない場合もあります。チェック業務のベテランが定年退職したあと、その後任がなかなか決まらないというケースも考えられるでしょう。 

こうした人材不足をカバーできるのが、生成AIです。生成AIにはハルシネーション(事実とは異なる情報や存在しない情報を生成してしまう現象)などの問題もありますが、複雑な内容の文書を評価したり、関連情報を掲示したりすることは可能です。 

もし文書チェックに関する担当者が不足していたり、新しい担当者の経験が浅かったりしても、生成AIを上手に使うことで人材不足や業務効率を改善することができるでしょう。 

多言語化への対応 

現状では国内のみでビジネスを展開している金融機関でも、企業の海外展開や外国人顧客の増加といったさまざまな要因から、金融機関は英文を中心とした多様な言語の文書を取り扱う必要が出てくるかもしれません。 

生成AIサービスの中には、文書の多言語対応を進めるにあたって必須の「翻訳作業」に特化したものもリリースされています。そのような生成AIサービスを使えば、翻訳会社を通したり、自社の人材で翻訳をしたりするよりも、よりスピーディかつコスト削減しながら翻訳&文書チェック作業を完了させられる可能性があります。 

ロゼッタの「専門文書AI」や「四季報AI」で翻訳や知識面をサポート 

では、具体的にどのような生成AIサービスが金融機関の文書チェック作業に貢献し得るのでしょうか。 

例えば、ロゼッタの「T-400」は、金融領域含め、法務・医薬・化学・IT・機械・電気電子など、2,000以上の専門分野に対応しているAI自動翻訳ソリューションです。専門用語や参考文献に基づく高い翻訳精度が特徴で、複雑かつ専門的な内容が多い金融機関の文書についても、高い正確性で翻訳することが可能です。 

英文など外国語の資料を取り扱う機会が増えた際に「T-400」を活用すれば、文書チェック作業に必要な翻訳を正確かつスピーディーに完了できます。 

加えて、“ChatGPTの会社四季報版”とも言える、東洋経済新報社が提供する「四季報AI」も併用すれば、金融商品に関する知識をさらに蓄積でき、より専門性の高い金融商品の文書チェックが実現できるでしょう。 

まとめ 

金融機関は従来からさまざまな文書や販促物、広告物などを扱っていますが、「紙資料が多く業務効率が低下しやすい」「文書チェック業務の専門性が高く、業務が属人化しやすい」などの課題を抱えています。 

この課題を解決する方法として、生成AIの活用が期待されています。必要なサービスを適切に組み合わせ、業務効率化やチェックの正確性向上、業務の属人化防止など、現在の文書チェック業務の課題の解消を試みてはいかがでしょうか。 

ライター名:加茂 歩

証券会社・求人広告会社を経て、2019年よりフリーライターになる。投資・資産運用に関する金融記事のほか、求人広告会社時代に人事採用担当者へ数多くの取材をしてきた経験から、インタビュー記事も執筆している(編集:株式会社となりの編プロ)

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