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金融機関で進む生成AIによる「お客様対応」各社の導入状況は? 

December 10, 2024

  • AI
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「生成AI元年」と呼ばれた2023年以降、続々と生成AIサービスがリリースされています。生成AIは幅広い業界で導入が進んでおり、人材不足が懸念されている金融機関もその例外ではありません。高度なセキュリティ確保を必要としながらも、すでにさまざまな業務において生成AIの導入や利用が検討・実施されています。 

そのなかで近年、多くの金融機関で取り組まれているのが「お客様対応業務への生成AI導入」です。これにより、どのような課題が解決されるのでしょうか。実際の事例とともに紹介します。 

金融機関に迫る「人材不足」の波 

日本全体の緩やかな労働力人口の減少により、今や多くの業界で課題となっている人材不足。金融機関にもその課題は現在進行形で押し寄せています。 

金融機関は従来から店舗の窓口や顧客の自宅・オフィスなどで接客を行う、対面型のビジネスをベースに成長を続けてきました。このビジネススタイルには「人」の確保が欠かせません。加えて、資産預かりや融資、国内外への送金といった各業務に関する事務担当者も、相当な人数を必要としていました。しかし今後は、これまでのような人材確保が難しくなると言えます。 

特に顕著だと言われているのが、IT人材の不足です。例えば、2023年7~8月に日本銀行および金融庁が実施した調査では「サイバーセキュリティ人材が十分に確保できていない」という回答が大半を占めていることが明らかになりました。具体的には、次のようなIT人材が不足していると回答されています。 

  • サイバーセキュリティ監査を行う人材(82.9%) 
  • 新たなデジタル技術の導入に際し生じ得るサイバーセキュリティのリスク評価を行う人材(73.7%) 
  • サイバーセキュリティの観点からシステムの設計・開発を行う人材(73.5%) 

参考:地域金融機関におけるサイバーセキュリティセルフアセスメントの集計結果(2023年度)|日本銀行金融機構局 金融庁総合政策局 

こうした状況から、金融機関における人材不足は比較的深刻で、その影響は大きいと考えられています。そのため近年では、デジタル化による業務効率化や、ワーク・エンゲージメント向上などの取り組みが加速しています。 

金融機関の「お客様対応」に生成AI利用活用の兆し 

顧客の資産や個人情報を取り扱う金融機関では、日々さまざまなお客様対応が発生しています。一方、先述した人手不足を背景に、お客様対応の業務効率化を目的として、生成AIを活用する事例が見受けられるようになりました。 

ここでは、金融機関のお客様対応における生成AI活用事例を3つ紹介します。 

みずほ銀行:問い合わせ内容に応じて生成AIがオペレーターに情報を提示 

みずほ銀行では2024年8月より、オンラインでのお客様対応に生成AIを活用する取り組みを進めています。具体的には、オンライン上のお客様とのやりとりを生成AIがリアルタイムで分析し、その内容を踏まえた回答や関連サービス情報などをオペレーターに提案するというものです。 

例えば、お客様の「購入する投資信託の銘柄を迷っている」という発言を生成AIが認識した場合、生成AIが自動で適切な投資信託商品群をオペレーターのPC画面に表示します。この情報を参考にし、オペレーターはお客様とスムーズにやり取りをすることができるのです。 

オペレーターに適切なお客様対応をしてもらうためには、金融や商品に関する知識、事務手続きの内容などに関する教育が必要です。一方、このAIサービスを活用することで、例え知識・経験が十分ではないオペレーターでも一定レベルの対応が可能になります。 

そのほか、オペレーター目線のメリットとして、検索の手間がなくなるためお客様との会話により集中できるようになる点が挙げられます。生成AIのサポートにより、対応ミスの軽減やよりお客様に寄り添ったコミュニケーションが実現されるでしょう。 

大和証券:会話形式でお客様の問い合わせに対応 

大和証券では2024年10月から、AIオペレーターサービスの提供を開始しています。このサービスの特徴は、お客様が音声会話によって疑問を解消できる点です。対応可能な範囲は、マーケット情報や入出金方法、口座開設方法など多岐にわたります。 

同サービスの導入により、オペレーターの業務負荷軽減に加え「コールセンターに電話をかけてもなかなか繋がらない」というユーザーの不満も解消されます。まさにオペレーターとお客様がWin-Winになれるサービスと言えるでしょう。 

将来的には、コールセンターの代替としての役割を果たすかもしれません。 

愛知銀行:自動チャットで疑問を解決 

愛知銀行は2024年8月、AIを活用した自動応答サービスをホームページ上に導入しました。愛知銀行のホームページにアクセスすると、自動的にチャットボットが立ち上がり、ユーザーが自ら口座開設やATM取引などのさまざまな疑問を解決できる仕組みです。 

銀行目線では、ユーザーからの問い合わせ対応の一部を自動応答サービスに対応させることで、問い合わせ業務やそれに関する人員の削減を図ることができます。 

資産運用のサポートに活用できる「四季報AI」 

お客様からの問い合わせの中には「この企業の決算についてどう思う?」「この企業の株は今後上昇が期待できるかな?」など、個別銘柄に関する質問も少なくありません。しかしこうした個別銘柄に関する問い合わせに的確に答えるためには、銘柄に関する豊富な知識が必要です。とはいえ、銘柄情報を即座に収集して適切に回答するのは、簡単なことではないでしょう。 

そんな課題を解決するツールが「四季報AI」です。四季報AIは、東洋経済新報社の「会社四季報オンライン」をはじめとする記事・データを出典として、銘柄分析をサポートする対話形式のツールです。 

例えば「AppleとMicrosoftの業績・株価を比較して」「三井物産が大株主となっている銘柄を教えて」などのプロンプト(指示文)を入力すると、四季報AIがそれぞれの質問に対して多面的な回答を作成してくれます。 

投資家のバイブルとも言われる四季報のデータを学習した四季報AIを活用し、効果的な回答を迅速に提供することで、顧客満足度の向上や株式投資の未経験者層の取り込みを図ることができるでしょう。 

多様なお客様に対応するための自動翻訳 

グローバル化が進み、インバウンド需要も増加している近年は、外国人労働者の受け入れや海外資本の国内参入などにより、金融機関の「お客様対応」が多様化・多言語化すると見られています。そのためWebサイトや営業資料、商品説明資料などの翻訳作業の必要性は高まるでしょう。 

そこで役立つのがAI自動翻訳「T-4OO」です。法務・医薬・金融・化学・IT・機械・電気電子など、2,000以上の専門分野に対応しており、プロ翻訳者に匹敵する正確さで外国語を翻訳できる機能を搭載しています。暗号化通信、ISMS認証取得の国内サーバーによる堅牢なセキュリティ環境で、情報漏洩の心配もカバー。多様化するお客様対応の強い味方になるでしょう。 

まとめ 

日頃から多様かつ大量の問い合わせが寄せられる金融機関にとって、迅速で的確なお客様対応は常に重要とされる業務です。人材不足という課題にも直面する中、本記事で紹介した金融機関のように生成AIを用いてお客様対応の効率化に取り組む例は、今後増加していくのではないでしょうか。必要に応じて各種生成AIを活用し、日々の業務をより効率化して、精度の高いお客様対応に取り組んでいきましょう。 

ライター名:加茂 歩

証券会社・求人広告会社を経て、2019年よりフリーライターになる。投資・資産運用に関する金融記事のほか、求人広告会社時代に人事採用担当者へ数多くの取材をしてきた経験から、インタビュー記事も執筆している(編集:株式会社となりの編プロ)

四季報データをAI解析、投資判断を効率化する革新的ツール「四季報AI」

「四季報AI」は、東洋経済新報社の「会社四季報オンライン」をはじめとする記事・データを出典として、証券会社や株主はもちろん、投資家や市場調査担当者などを対象に、株式市場での企業分析をサポートする対話形式のツールです。
東洋経済新報社と提携し、「四季報AI」へのAPI接続提供を開始。四季報AIの膨大な企業情報と市場情報のAIによる分析結果を利用可能になりました。

「四季報AI」の特徴

  • 「四季報AI」は、LLMを活用した高度なデータ解析により、株式投資、企業研究に関するユーザーの質問に対して多面的な回答を導き出します。
  • 「四季報AI」は、「会社四季報オンライン」をはじめとする東洋経済のメディアに掲載されている情報を主な参照元にしています。参照元を明示することで、情報の信頼性が高まり、また、詳細な情報の検索がしやすくなります。
  • 「四季報AI」では今後も、チューニングによる応答の改善やより良いモデルの検討を含め、ご利用状況に対応しながら精度の向上などを行ってまいります。
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