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【インタビュー記事】生成AI「ラクヤクAI」で治験文書の自動化に挑む―ロゼッタ取締役が語るラクヤクAIの未来とは?

November 07, 2024

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AI自動翻訳のパイオニア企業として知られる株式会社ロゼッタは、現在生成AIを活用した治験文書作成支援ツール「ラクヤクAI」を展開しています。

2023年を「生成AI元年」と位置付け、製薬業界向けの新たなソリューションとしてラクヤクAIをリリース。取締役の古谷祐一が、サービスの特徴や目指す未来像について詳しく語りました。

株式会社ロゼッタ取締役古谷祐一

2007年にGMOインターネットの連結子会社であるGMOスピード翻訳株式会社の代表取締役社長を経てロゼッタの連結会社Xtra株式会社の代表取締役に就任(退任)。

現在は取締役としてロゼッタの営業部門を統括。AI翻訳の限りない可能性を世の中に広めるべく精力的に活動している。

2012年より一般社団法人日本翻訳連盟理事(10年従事し退任)、2014年よりアジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)監事を務める(現任)。

製薬業界の文書作成業務を変革する

――まず、ラクヤクAIの開発背景についてお聞かせください。

製薬業界は他の業界と比べても、文書作成業務の負担が特に大きい業界です。基礎研究から市販後に至るまで、様々な文書の作成・チェック・確認作業が発生します。

例えば、治験総括報告書(CSR)一つを取っても、Protocolやデータの解析結果など、様々な文書を参照しながら作成する必要があります。特に製薬業界は、人命に関わる製品を扱う性質上、厚生労働省をはじめとする規制当局からの厳格なルールが設けられているため、文書作成においても高い品質と正確性が求められ、作成から確認までの工程に多大な時間と労力が必要とされてきました。

「そんな業務を生成AI活用で効率化できないか」ということで、開発に着手しました。

――製薬業界の膨大な文書作成業務が効率化すると、技術者の業務負担は大幅に軽減できそうですね。生成AIの進歩が目まぐるしい昨今では、製薬業界における「生成AI導入での業務効率化」への期待は高いようですが、いかがでしょうか?

2022年11月にChatGPTが登場して以降、生成AIへの注目は急速に高まっていますね。実際、大手コンサルティングファームの調査でも、ヘルスケア領域における生成AI導入への関心は非常に高い状況です。特に、メディカルライターの文書作成やQC業務において、60%以上の時間短縮が可能との報告もあります。

製薬業界は規制産業であり、ルールが明確に定められている分野です。そのため、生成AIの活用効果が特に高いと考えています。明確なルールやガイドラインがあることで、AIの出力に対する評価基準も明確になり、より安全で効果的な活用が可能になるはずです。

――特殊な分野だからこそ生成AI活用が難しい印象でしたが、“明確にルールが定められている環境だからこそ、生成AIの活用効果が高い“という観点は、目からウロコでした。ロゼッタには、製薬業界向けのソリューションを提供してきた実績があるそうですが、詳しくお伺いしてもよいでしょうか?

弊社は20年以上にわたりAI自動翻訳の開発・販売を行ってきました。特に、2,000分野の専門辞書を搭載した産業向けAI翻訳『T4OO』は、製薬企業を含む6,000社以上に導入いただいています。特に、製薬業界のお客様には100社以上の導入実績があり、高い信頼をいただいています。

一般的な機械翻訳エンジンは、一つのエンジンであらゆる分野に対応しようとするため、専門分野での精度に課題がありました。我々は産業翻訳に特化し、専門分野を徹底的に追求することで、より高品質な翻訳を実現してきたんです。この経験は、ラクヤクAIの開発にも大きく活かされていますね。

――専門分野に特化した生成AI…それは技術者の方にとって心強い味方になるでしょうね。

ラクヤクAIの主要機能

――ラクヤクAIは、具体的にどのような機能を提供しているのでしょうか?

大きく分けて4つの機能を提供しています。1つ目は文書自動生成機能です。CSRやProtocolなどの治験関連文書やプロモーション資材などを自動で生成します。製薬業界に特化したサービスとして、業界特有の専門用語やルールに対応し、正確なアウトプットを実現しています。

2つ目は整合性チェック機能です。作成済みの文書と、その文書を作成する際に引用した文献やファイルとの間で、整合性が取れているかをチェックします。例えば、数値の誤りや、引用元URLの内容との不一致などを検知します。整合性チェック機能があるおかげで、人手による確認作業の負担を大幅に軽減できます。

3つ目は講演内容モニタリング機能です。講演資料や講演音声をモニタリングし、適用外表現を自動でチェックします。コンプライアンスの観点から、この機能へのニーズは特に高く、実際の運用で高い評価をいただいています。

4つ目は薬剤情報やナレッジの検索機能です。社内にある膨大な資料やデータを活用し、必要な情報を効率的に検索・抽出できます。これまで多くの時間を要していた情報収集作業を、大幅に効率化できるようになりました。

――製薬業界に特化したAIツールとして、ラクヤクAIが提供する機能は非常に実務的ですね。特に、CSRやProtocolのような専門性の高い文書の自動生成など、現場のニーズに応えていることがよくわかります。

技術的な特徴とセキュリティ

――ラクヤクAIを開発するうえでの技術面の特徴や工夫について教えてください。

最も重要な技術的特徴は、RAG(Retrieval-Augmented Generation)と呼ばれる技術の活用です。これは、生成AIが知らない情報を外部データベースとして補完する技術です。例えばCSRを作成する場合、ProtocolやICF(同意説明文書)などの情報をデータベースに格納し、それらを参照しながら文書を生成します。

また、AI自動翻訳で培った技術を活用し、高精度の文書生成を実現しています。国産ベンダーとして日本語と向き合ってきた経験を活かし、日本語での正確なアウトプットを可能にしています。

――明確にルールが定められている製薬業界だからこそ、RAG技術の有効性が発揮できそうですね。生成AIはセキュリティへの不安を声にする方も多いですが、セキュリティ面での取り組みについて、なにか工夫をしたことなどがあれば教えてください。

医療関連情報は機密性が高いため、セキュリティには特に注意を払っています。お客様専用の生成AI環境を構築し、社内の膨大な資料やデータを安全に活用できる仕組みを整えました。また、データの保管場所は基本的に日本国内とし、お客様のセキュリティ要件に応じた柔軟な対応が可能です。

――セキュリティ面での不安が解消できるのであれば、技術者の方も安心して利用できそうですね。

導入効果と今後の展望

――ラクヤクAIの導入効果について教えていただけますか?

ラクヤクAIは、これまでにかかっていた大量の時間とリソースを大幅に削減しながら、膨大なデータを元にした正確なアウトプットを実現しています。特に、文書作成業務の効率化については、お客様から高い評価をいただいています。

また、生成AIの活用により、より多くの時間を本質的な分析や考察に充てられます。これは単なる業務効率化だけでなく、業務品質の向上にもつながっています。

――“生成AI活用で短縮できた時間を、本質的な分析や考察に充てられる“という点は、よりクオリティの高い製品をいち早く市場に提供できたりなど、製薬業界全体にとってメリットとなるポイントですね。最後に、ラクヤクAIの今後の展望についてお聞かせください。

現在、多くの製薬企業様にラクヤクAIをご検討いただいていますが、これはまだ可能性の一部に過ぎないと考えています。文書作成の効率化はもちろんのこと、製薬企業が持つ膨大な知見やデータを、より戦略的に活用できる可能性を秘めていると考えています。

また、現在提供している文書作成支援機能も、お客様からのフィードバックを基に、より使いやすく、より高度な支援が可能となるよう、継続的に改善を重ねています。さらに、コンプライアンス関連の機能も、規制環境の変化に応じて進化させていきます。

ただし重要なのは、生成AIはあくまでも「人間の支援ツール」だという点です。AIが生成した内容は、必ず人間が最終チェックを行う必要があるため、人間とAIが協調して働ける環境をさらに整備していきたいと考えています。

製薬業界の文書作成業務を効率化することで、新薬の開発スピードを向上させ、より多くの患者さんに早く治療機会を提供することができる。それが私たちの目標です。国産ベンダーとして、日本の製薬企業の皆様により適したソリューションを提供できるよう、さらなる進化を続けてまいります。

――ラクヤクAIが広く普及すれば、製薬業界の働き方が一変しそうですし、よりクオリティの高い治療法が確立されたりなど、わたしたちの生活にも影響しそうですね。本日は、お忙しい中インタビューに答えていただきありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。

製薬業界で生成AIを活用する「ラクヤクAI」

「ラクヤクAI」は、治験関係書類や添付文書といった社内外の膨大なデータを活用し
製薬事業のあらゆるシーンを効率化する専門文書AIサービスです。
基礎研究から製造販売後調査まで、多岐に渡る製薬業務の中で取り扱われる
様々な文書の作成・チェック作業を自動化し、圧倒的な業務スピード改善を実現します。

「ラクヤクAI」ご活用シーン(例):

  • 治験関連文書やプロモーション資料の自動生成
  • 作成資料のクオリティチェックや、資料間の整合性チェック
  • 講演内容(資料・音声)の適用外表現モニタリング
  • 薬剤情報やナレッジの検索・調査

その他、個別カスタマイズが可能な生成AI環境で、
社内の知見を統合的に分析・集約したアウトプットをセキュアな環境をご提供します。

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