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【Pharma AI Nexgen-製薬AIネクスジェン-】もし、そのとき生成AIがあれば -ノンパレルとの対峙-

November 05, 2024

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こんにちは、ファーマ・テック・トランスレーターの石川です。
過去の自らの業務を思い返して「あの時生成AIがあったなら」と考えるシリーズ。
今回も前回に引き続き、製剤研究を担当していた40年以上前を振り返りながら、自分の記憶に頼らない業務の仕方について考えます。
※このコラムでは「生成AI」という場合、弊社親会社・株式会社メタリアル社が開発したLLMオーケストレーション・システム「LLM2」のことを指しています。

製薬も多面的な設計の時代に

私が社会人となった今から数十年前から低分子医薬品の開発はすでにそろそろ限界に達しつつありました。今となっては、世界の医薬品の開発は抗体を始めとするバイオロジクス中心の高分子化合物に大きくシフトしています。

このシフトはインフォマティクス的にも当然の帰結です。天然物と生物との関係性や自然現象の一端をとらえて医薬に応用するフェーズは終わったと考える研究者がほとんどではないかと考えます。これからはインフォマティクスを駆使した多面的な設計の時代になったと考えてよいと感じています。

このような流れを見ていると、インフォマティクスを駆使するという意味では、大量の多面的なデータを関連付けて可能性を提示する速度と能力をもつ生成AIは、人間よりも一日の長があるのではないかと考えています。

パテントクリフと利便性の向上

このような時代の流れの中で、すでに半世紀近く前の当時、新薬メーカーにとっては(新薬の特許満了に伴って、売上高が急落すること)が迫る医薬品について患者さんの利便性を高めたり、製品のリニューアルで先行優位を維持する工夫が重要視されつつありました。具体的な手法の一つとして一日3回の服用を2回にする徐放性を持たせる技術開発が盛んになっていました。

当時私も例え新薬が開発できたとしても、より製品の寿命を延ばすため特許として認められる可能性のある利便性の高いリニューアルが欠かせられないと考えていました。

そのような技術の一つとしてCFグラニュレータというフロイント産業(以下F社といいます)が当時販売していたコーティング機械で徐放性製剤の工程設計検討を行っていました(現在は乾燥効率を向上させた多用途の新世代機が発売されています)。

この製剤機械の用途は、複数の成分と複数の溶出性(時間当りの有効成分放出量)の組み合わせで経口製剤を設計することです。実際のプロセスは存じませんので私の推測ですが、この種の技術を応用した身近な例にはグラクソスミスクラインジャパン社が販売されているOTC薬の「コンタック600プラス」があります。

「ノンパレル」が表舞台に

初期は製造の過程でグラニュー糖の結晶の粒の大きさを合わせたコアを採用していましたが、F社が供給開始したコア物質として粒度と形状の揃った汎用性の高い「ノンパレル*」を使用するようになりました。(*ノンパレルは角無しという意味で、金平糖の角が無いということを表しています。)

機械の原理を簡単に記載すると、まず、装置は平底鍋のような形状をしています。この鍋の底面が回転しノンパレルに遠心力を与え、装置と一体の固定された側面との摩擦力で転動させ、これを回転板と固定側面とのスリットからの送風で転動効率を高め、ノンパレルに結合剤液を噴霧しつつ粉末状の薬効成分を投入し延着させ、連続的に乾燥させるという仕組みです。

「ノンパレル」と向き合う

これに対して当時私は、微分方程式を作って、実際に実験で試すという工学的方法をトライしていました。

現象としてはノンパレルの上に結合剤液ΔLが噴霧され、そこに薬物粉末ΔWがチキソ性のある半固形物の層厚Δrとして積層されていきます。結合剤液の濃度をb/Lで一定とすると・・・

4πr2・Δr・D=ΔW+ΔL
チキソ性の臨界濃度(最も高濃度)をDとすると溶解実験により
(W+b)/L=D :constant 実測値が得られるのでその値を用いて
固形分重量W+b=D・L
送風温度と風量を考慮して。。。

ここまでは記憶にありますが、当時の細かい設定は記憶の底に沈んでしまっています。
そして、私が実験を通して昼用なパラメータを物質ごとに取得し、かなり自由にパラメータ設定でコントロールできるようになったところで、工場に異動することになり、ここまでで検討は終了しました。

今再現できるか?生成AIなら・・・

このような複雑な工程や思考、実験は、人間の記憶の中に永遠に留めておくことはできません。何かの拍子に、「あれはなんだったか」と思った際、生成AIを応用すれば、このような知識を記憶に頼らなくてもアーカイブスとしていつでも取り出せるようにできます。

現に、このコラムも生成AIが当時あったらどうかを考える中で、過去のコラムに書いた内容を使えるのではと思い立ち、生成AIにその内容を学習させてし一部素案を書き起こしています。

過去のコラムでは自動翻訳の文脈で「自動翻訳の結果を編集し、翻訳資産として残すことが効率アップの決め手である」という説明に使用しましたので、視点を現代の生成AIに移してこの話題を振り返ってみましたが、やはり「知識をAIに学習させて業務のパートナーにすることで効率アップにつながる」という結論は変わりませんでした。

まとめ

今回は、生成AIを活用して知識をアーカイブスとして取り出し業務課題を解決する可能性について、私の過去の経験に基づいて、考察をしてみました。

製薬分野に限らず、AIの応用で具体的な課題とお持ちであれば、ぜひお問い合わせいただければ幸いです。

株式会社ロゼッタ/ファーマ・テック・トランスレーター/石川 博

1979年にサントリー(株)の医薬事業の一期生として入社。製剤研究、医薬品開発や上市申請まで幅広い業務に携わる。その後、第一三共グループ時代にロゼッタのAI精度に感銘を受け、「言葉の壁を取り除く」使命を見出しロゼッタへ入社。現在、AI時代の到来に際して専門知識と経験を活かし、製薬業向け「ラクヤクAI」のサービス・CS向上を推進。言葉と製薬業界の未来を切り開く挑戦を続けている。

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