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【Pharma AI Nexgen-製薬AIネクスジェン-】もし、そのとき生成AIがあれば -はじめてのMBR作成-

October 22, 2024

  • AI
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こんにちは、ファーマ・テック・トランスレーターの石川です。
連載を始めてから過去の自らの業務を思い返して、「あの時生成AIがあったなら」と考えることが多くなりました。今回もそのような事例のご紹介です。
※このコラムでは「生成AI」という場合、弊社親会社・株式会社メタリアル社が開発したLLMオーケストレーション・システム「LLM2」のことを指しています。

SOP作成という苦行

さて、皆さんはSOP(Standard Operating Procedures)作成を担当されたことはありますか。SOPというのは作業を担当している人にとっては、分かり切ったことを文字化した作業書・指示書のことを言います。SOP作成は、職人芸に秀でた日本人にとっては、苦行の一種では(であったのでは)ないでしょうか。

前々回のコラムでも少し触れましたが、私は30歳前後に、サントリー*が最初に医薬品として上市した抗不整脈薬サンリズム®(塩酸ピルシカイニド)**の製剤設計を、開発初期から担当しました。
*旧第一製薬(現第一三共)への事業譲渡により医薬品事業からは撤退済み。
**現在は第一三共が販売。

治験期間中の安定性データを取得するために、治験薬として供給開始する前から、この医薬品候補物質の製造指図・記録書(英語ではMaster Batch Record、以下 MBRという)を作成する必要があります。MBRは個々のSOPのダイジェスト版とも言える内容です。

MBR作成の手順・方法

最初は固形製剤の担当者が私一人でした。自分でMBRを作成して、自分でそこに記載した手順に従って作業し、自分で手順に従ったことを記録する。自分の活動の自由を縛る文書と、その文書に従った記録を自分で作成することになります。もちろん最終承認は治験薬管理責任者が行います。

MBR作成に際して問題になるのは、次の2点です。

  1. 自由度を残しておきたい箇所の記載を、どこまで詳細に記載するか決める必要がある。
  2. 詳細を記載する場合でも、逆に、わかりきっていることは省略しがちになる。

これらの問題個所を、誰がどのように修正し、作業を正しく記録できるかが課題です。

私のように経験者が身近にいない環境では、最終承認は治験薬管理責任者が行うものの、それまでの工程は全て自身で時間をかけて調査し、対処内容を判断する必要がありました。

MBR作成に生成AIを活用する

もし、この作業に生成AIを活用したシステムを運用できたなら、新規事業で十分なエキスパートがそろわない状況でも、情報を逐次Webクローリングによって収集し、担当者へのアドバイスに役立ちになる仕組みを構築できる可能性があります。

この例のような微妙な判断を行わなければならない場面で、過去の自社事例やガイドラインに照らし合わせて、第三者的にアドバイスしてくれる人がいたら、どれほど時間が節約できたでしょうか。それを、生成AIが担って支援してくれるかもしれないのです。

生成AIを使用したシステムであれば、特定の業務に必要な制限事項(最新の関連ガイドラインや自社の過去事例など)を、Retrieval-augmented generation(RAG)によりAIに参照させることで、このようなニーズにも提供し、対応してくれるシステムが構築できると期待されます。

まとめ

今回も業務特化型のAIの可能性について私の過去の経験に基づい、「こんな業務に生成AIが使えるかもしれない」という可能性をご提案しました。

製薬分野に限らず、AIの応用で具体的な課題とお持ちであれば、ぜひお問い合わせいただければ幸いです。

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株式会社ロゼッタ/ファーマ・テック・トランスレーター/石川 博

1979年にサントリー(株)の医薬事業の一期生として入社。製剤研究、医薬品開発や上市申請まで幅広い業務に携わる。その後、第一三共グループ時代にロゼッタのAI精度に感銘を受け、「言葉の壁を取り除く」使命を見出しロゼッタへ入社。現在、AI時代の到来に際して専門知識と経験を活かし、製薬業向け「ラクヤクAI」のサービス・CS向上を推進。言葉と製薬業界の未来を切り開く挑戦を続けている。

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