
こんにちは、ファーマ・テック・トランスレーターの石川です。
皆さんはLLM(大規模言語モデル)とどのようにお付き合いされていますか。フルに活用しているという方はどの程度でしょうか。使ってみたけど自分には合わないと感じている方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。機能を絞らないととても使い物にはならないと考えていらっしゃいませんか。
この状況は私の過去の経験と似ています。
LLM活用とアセンブラ時代の共通点とは?
私が学生のころ、8bit CPU黎明期で、マイクロコンピュータボードが流行しており、その時代にはアセンブリ言語でプログラムを書く技術者が多く見られました。Qwertyキーボードを備えたパーソナルコンピュータが誕生し、BASICなどの高水準プログラミング言語中心に普及しましたが、高速処理が要求されるゲームプログラミングの分野では、アセンブリ言語が主流でした。人間にとって可読性の高い高水準言語からのコンパイラ技術が普及することでアセンブリ言語の直接使用頻度は減少しましたが、なお、高度に最適化されたプログラミングを実現するための重要な手段として位置付けられていました。
今、欧米でLLMの社会実装が進む中、日本ではそれほど活用が進んでいないのはどうしてでしょうか。私は次のように考えています。
英語は文の構造がほぼ一定のルールに従い、要素が説明的であり、論理の抜けを許さない構造が基本にあります。その意味で可読性の高いプログラムの記述に向いています。
一方、日本語は、雰囲気を背景にし、必ずしも論理がすべて含まれていなくても仲間内では意図が伝わることが多いです。そのため、日本人はAI(LLM)が自分と同じ背景情報を持っていると無意識に早合点して対話する傾向があるかもしれません。近年のLLMにはヒストリー機能が実装されていることで、LLMも利用者の背景情報を理解する能力が向上しています。しかし、依然として、背景情報を正確に説明できる日本語リテラシーが重要であることに変わりはありません。
言い換えると、LLMにとっては、英語は高水準プログラミング言語そのものであり、LLMにとって日本語は難解なアセンブリ言語に相当するといっても過言ではないと考えます。つまり、日本のユーザーには逆コンパイラ(*)の役割をするシステムが必要と推察します。
(*)逆コンパイラ (decompiler, デコンパイラ)とは、機械語 (オブジェクトコード)を、元の高水準言語 (ソースコード)に変換するソフトウェアのこと
世界に遅れを取らないために、日本人の個々のリテラシー差によるLLM活用の難易度の個人差という課題を解決し、企業や組織のLLM活用のリテラシーを平準化する方法が求められていると考えています。
IEから学ぶ、LLM導入のためのオーケストレーション
私は、この方法に近い類似の産業上の工夫として、工場の人が働く工程(事務所の事務作業も同様)の効率化をもたらしたインダストリアルエンジニアリング(以下、IEという)と同じ工夫が重要であると考えています。
以前の私のコラムで、「Metareal AI LLM2」はライン生産におけるサーブリック分析であると説明したことがあります。日本においては、サーブリック分析や他のIE手法をさらに発展させる形で、トヨタ生産システム(TPS)に代表される統合的なライン生産技術に磨きをかけ、おのおのの産業の生産活動の効率化、精密化が進められてきました。
LLM活用において、多様なLLMのオーケストレーションシステムは、このIEに相当する技術です。LLMのオーケストレーションシステムの革命的な進展が、日本の天才エンジニアの1人であるメタリアル社CTO米倉の指導により推進され、今実用期を迎えつつあります。すでにお気づきの方もいらっしゃると思います。なぜメタリアル社は驚異的なスピードでAIエージェントが作れるのでしょうか。そのスピードが「Metareal AI LLM2」が実用期に入っている証拠です。
日本人のリテラシーの差によるLLM活用の難易度の課題を解決し、組織全体のLLM活用のリテラシーを平準化する方法が求められている現在、IEが工場の工程作業や事務作業に飛躍的効率化をもたらしたことと同様に、LLMのオーケストレーションシステムも重要な技術となると断言できるのではないでしょうか。

株式会社ロゼッタ/ファーマ・テック・トランスレーター/石川 博
1979年にサントリー(株)の医薬事業の一期生として入社。製剤研究、医薬品開発や上市申請まで幅広い業務に携わる。その後、第一三共グループ時代にロゼッタのAI精度に感銘を受け、「言葉の壁を取り除く」使命を見出しロゼッタへ入社。現在、AI時代の到来に際して専門知識と経験を活かし、製薬業向け「ラクヤクAI」のサービス・CS向上を推進。言葉と製薬業界の未来を切り開く挑戦を続けている。
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