
こんにちは、ファーマ・テック・トランスレーターの石川です。
企業内でLLM(大規模言語モデル)を活用できる環境をお持ちの皆さんはどのような使い方をされていますか。
自分自身の経験に照らし合わせて、プロンプトエンジニアリングを学ばれた皆さんは各自の用途にあった使い方をされていることと思います。
LLM活用で浮き彫りになる“表現力”の壁
LLMを使い初めて最も課題と感じることは、自分の文書表現能力ではないでしょうか。
LLMは文脈を読み取って回答を生成します。そもそもプロンプトに文脈が無ければ適当に見繕って返事をしてきます。使いこなす為には自分の持つイメージが伝わるプロンプトを作成する必要があります。使い込むうちにチャット履歴で文脈を忖度してくれるのでそれなりに意図に近い回答が得られますが、これも個々のチャットでの対話の表現力に依存します。
話は数十年前に遡ります。私は、最初に所属していた会社で管理職となる前に先輩として新入社員のコーチングを担当したことがあります。一通り説明したのでわかっているだろうと考えて、修得済みとして、限定した作業を頼むと、ごく稀に思いもかけない結果に遭遇することがありました。
具体的には、治験薬(*)の製造用の新しいパイロットプラントが竣工して間もないころのことです。引き渡しのためのクリーンルーム内を含む清掃がすべて完了し、これから自分たちで仕上げの清掃消毒を行って使用を開始する計画の初日のことです。清掃作業の手順を決めて作業を開始したときに、何とクリーンルーム用の無塵衣ではなく、事務室用の作業服で作業を始めているのを目にして驚いたことを今でも映像として焼き付く形で覚えています。
(*)新薬候補の開発研究の中で人での臨床試験(治験)に使用される薬剤。
最初の1人が更衣室で無塵衣に着替える手順をすっ飛ばしてクリーンルーム内に入っていたのです。引き渡し前には確かに事務室用の作業服で内部で作業していたことがあります。新人であり勘違いしても無理はありません。口頭で注意事項を伝えたつもりでしたが、やはり内容が固定された文書で指示していなかったことが原因でした。皆さんもご存じのように、ほとんどのクリーンルームでは入室と退室の更衣手順を示したイラストや写真付きの手順書を掲示設置するのが常套手段でありますが、当時は立ち上げ直後ということもあり、そこまでは手が回っていないかったのです。
これと同じようなことがLLMとの付き合いの中では頻繁に生じます。
つまり、利用者が求めるものを具体的に文(または文書)で具体的に提示して、LLMにその理解度を確かめるステップが必要になります。これがプロンプトチューニングです。
プロンプトチューニングに活かすGMP的アプローチ
これは、医薬品のGMP(適正製造規範、Good Manufacturing Practice)で要求される作業員の教育カリキュラムと教育記録の組み合わせと同じ考え方です。製薬企業の皆様はGMP的な考え方(手順の標準化、教育訓練)でプロンプトチューニングに取り組まれることをお勧めします。
- AIの誤りを最小限にすること
- 文書の信頼性及び品質低下を防止すること
- 高い文書品質を保証するシステムを設計すること
ロゼッタでは、独自のLLMオーケストレーションシステムを活用し、SaaS版サービスであるラクヤクAI(ラクヤクDIサーチ、ラクヤクQCチェック、ラクヤクMWエディタ、ラクヤクQ&Aアシスト)また、カスタマイズとして専門文書毎に、多岐にわたる具体的な要件を定めるお手伝いをするなどを行っております。是非一度、ご相談いただければ幸いです。

株式会社ロゼッタ/ファーマ・テック・トランスレーター/石川 博
1979年にサントリー(株)の医薬事業の一期生として入社。製剤研究、医薬品開発や上市申請まで幅広い業務に携わる。その後、第一三共グループ時代にロゼッタのAI精度に感銘を受け、「言葉の壁を取り除く」使命を見出しロゼッタへ入社。現在、AI時代の到来に際して専門知識と経験を活かし、製薬業向け「ラクヤクAI」のサービス・CS向上を推進。言葉と製薬業界の未来を切り開く挑戦を続けている。
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