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【Pharma AI Nexgen-製薬AIネクスジェン-】COVID-19で思わぬ役回りへ 

March 18, 2025

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こんにちは、ファーマ・テック・トランスレーターの石川です。

本日は生成AIと自動翻訳がもたらす変革、そして私自身の挑戦についてお話しします。

パンデミックの始まりと新たな挑戦の模索

皆さんはCOVID-19が急速に感染者を増やしパンデミックを引き起こしはじめた2019年から2020年にかけてどのような生活をしていらっしゃいましたか。私は人生の次のステージのチャレンジテーマを探していました。 

酒類食品メーカーの新規事業の一期生として新薬誕生に寄与するという私のチャレンジは、製剤研究者としてピルシカイニド、サプロプテリン、製造管理担当者としてカルペリチド、品質管理担当者としてガンマインターフェロン、製造委託管理担当者としてファロペネム、研究管理担当者としてメマンチン、特薬管理担当者としてヒドロモルフォン、査察時に必要な資料の翻訳監修者としてトラスツズマブデルクステカンといった8有効成分(診断補助薬アデノシンも入れると9有効成分)という満足すぎる結果でした。 

製薬会社での雇用延長期間満了まであと1年と少しと迫る中、最後に寄与できたAntibody drug conjugate (ADC)トラスツズマブデルクステカンは中でも印象深いものでした。なぜなら、HER2陽性乳がん患者さんのORR(完全奏効(CR)と部分奏効(PR)の合計)を劇的に高め、PFS、OSを延長した時代を画する日本発の新薬が米国でNDA(New drug application)から最短期間で承認され、その一翼を担ったAI自動翻訳サービスの実力を目の当たりにしたからです。 

私は、この新薬の最速承認という大成功の一端を担ったAI自動翻訳サービス「T-4OO」の日本での普及活動に参加したいと、2019年12月にロゼッタ社(メタリアル社)の五石代表の面接を受けました。「我が国を言語的ハンディキャップの呪縛から解放する」ミッションに共感し、日本企業の在り方を根本から変えるAI自動翻訳のポテンシャルを実務上で解き放つチャレンジを私の残りの人生のテーマにしたいと考えたからです。 

COVID-19がただならぬ事態を引き起こすことが明らかになりつつある2020年4月から試用期間に入りました。当時勤務していた会社への副業申請も無事受理され、「日本をAI自動翻訳でどのように変容させることができるか」の構想を練っておりました。例えば、Apple社のMacintoshの普及に多大な貢献をした伝説的なエバンジェリスト、ガイ・カワサキのようになるには何をすればよいかを思慮していました。 

FDAガイダンスやCPG(コンプライアンス・プログラム・ガイダンス)の訳例や自動翻訳普及のためのコラムを書き貯め、たった3ヶ月後の7月、思いもかけず、AI自動翻訳事業のキャッシュカウ化が宣言され、全員営業の体制に変更になりました。長い製薬企業のキャリアで多様な業務経験を活かした中期的なAI自動翻訳エバンジェリストの夢は潰え、未経験の営業組織の中に配置されることになりました。


<余談>
私は46年前の研究職採用者でも全社員営業研修という時期に最初の会社に入社したので、営業職の先輩に同行し酒屋のご主人から倉庫への自社製品の搬入と店先への陳列をお手伝いし、その合間に取引上のお叱りを一緒に受ける経験を積んだ程度の経験はあります。新薬の販売では、品質管理課で苦情調査の役割を担い、顧客クレーム対応でMRに同行し、クリニックに出向いて品質課題をご連絡いただいた医師にお礼かたがた品質調査報告書を持参し説明したことがあります。 

AIの進化と人間の知能を超える時代の到来

1年程度、製薬企業向け営業担当の皆さんに製薬企業の翻訳が必要な仕事を解説したり、営業アプローチの方法をアドバイスする役回りをこなしておりました。なおも、エバンジェリストたるべく「企業は、自動翻訳サービスをどのように活かすことができるか」を主テーマにウェビナーでT-4OOの活用方法をご紹介し、ユーザー向けコラムの執筆を続けて居りました。 

自動翻訳の活用に不可欠な対訳を作るため生成AIを応用した日本語原文と英語翻訳文とのアライメント自作ツールを作成して、社内に紹介などしていた、2024年3月に思いもかけず、AI保全チームマネージャーの退職でLLM応用サービスの保全チームを引き継ぐことになりました。 

この際に、自身が現ロゼッタに入社前に語っていたパラメータ数を増やせば、イメージを紡ぐAIが作成できますと進言しても理解してもらえなかったことを思い出しました。従来の自動翻訳AIは著名な論文「Attention is all you need」で紹介されているように512個程度のパラメータで学習させたものであるのに対してLLMは人間のニューロン数に匹敵する莫大な数のパラメータを駆使して、学習を施したものであり、まさに人間がイメージを形作るのと同じ程度の能力を秘めています。 

そもそも人間は、言語という一次元情報で互いにイメージを伝え、そこから想起される二次元イメージ、三次元イメージ、さらに時間を加えた四次元イメージまでを駆使してコミュニケーションを図っています。飛び抜けた頭脳を持つ人々はさらに高次のデータを大脳というテンソル空間に射影して、縮約した数学記号で対話しています。つまり、パラメータ数の点では、このような飛び抜けた頭脳を持つ人間と同じことを行える能力を持つAIがすでに誕生しているわけです。 

このことを想起する度に私は身が引き締まる思いがします。私を含め皆さんは人間のテクノロジーが初めて人間の大脳の進化を追い越す時代の転換点に立ち会っているのではないでしょうか。AI自動翻訳を越えて、「ラクヤク®」を手始めとする生成AIを活用した専門ドキュメントの包括的な作成支援へ、これからの数年の社会の変化を想像するとなんだかワクワクしませんか。 

株式会社ロゼッタ/ファーマ・テック・トランスレーター/石川 博

1979年にサントリー(株)の医薬事業の一期生として入社。製剤研究、医薬品開発や上市申請まで幅広い業務に携わる。その後、第一三共グループ時代にロゼッタのAI精度に感銘を受け、「言葉の壁を取り除く」使命を見出しロゼッタへ入社。現在、AI時代の到来に際して専門知識と経験を活かし、製薬業向け「ラクヤクAI」のサービス・CS向上を推進。言葉と製薬業界の未来を切り開く挑戦を続けている。

製薬業界で生成AIを活用する「ラクヤクAI」

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