
AI業界で新たな注目を集めているのが「DeepSeek-R1」という高性能な大規模言語モデルです。中国のAI企業『DeepSeek』が開発したAIモデルで、OpenAIのo1モデルと同等の性能を持ちながら、オープンソースで公開され、低価格で提供されています。
本記事では、DeepSeek-R1の概要や利用方法、料金体系、注意点まで詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
DeepSeek-R1とは
DeepSeek-R1は、中国のAI企業DeepSeekが開発した推論能力に特化した大規模言語モデルです。開発元のDeepSeek社は、高性能なAIモデルの開発を手がける新興企業として知られています。
モデルの開発過程は非常にユニークです。まず、DeepSeek-V3という基本モデルをベースに「DeepSeek-R1-Zero」というモデルが開発されました。DeepSeek-R1-Zeroは、通常のAI開発で用いられる教師あり学習を一切行わず、強化学習のみで開発された実験的なモデルでした。
強化学習とは、AIが試行錯誤を繰り返しながら、よりよい結果を導き出す方法を学んでいく学習方法です。例えば、チェスのAIが対戦を重ねて上手くなっていくように、DeepSeek-R1-Zeroも問題解決を繰り返すことで、高度な推論能力を獲得していきました。
強化学習のみで開発されたDeepSeek-R1-Zeroは、高い推論能力を維持しながら、低コストで利用できる次世代のAIモデルとして、世界中から注目を集めています。
DeepSeek-R1の主な特徴
DeepSeek-R1には、以下のような特徴があります。
高度な推論能力
DeepSeek-R1は数学やプログラミングなどの分野で、特に高い性能を発揮します。例えば、アメリカの難関数学試験AIMEでは79.8%の正答率を達成し、OpenAI o1と同等の成績を収めています。
また、プログラミングの実力を測るCodeforces では「2029」というプロフェッショナルレベルの評価を獲得。一般的な知識を問うMMLUテストでも90.8%という高スコアを記録しています。
軽量モデルの提供
DeepSeek-R1の技術を活用した「DeepSeek-R1-Distill」という軽量モデルも提供されています。
1.5B、7B、8B、14B、32B、70Bなど、さまざまなサイズのモデルが用意されており、用途や環境に応じて選択可能です。また、32BモデルはOpenAI o1-miniを上回る性能を示しています。
DeepSeek-R1の料金体系
DeepSeek-R1は、Webチャット版を通じた無料利用と、API利用の2つの方法で提供されています。
Webチャット版(無料)
公式サイト(chat.deepseek.com)にアクセスし、アカウントを作成すれば、無料でDeepSeek-R1の機能を試すことができます。アカウントの作成は、Googleアカウントまたは、電話番号orメールアドレスで登録可能です。
API利用(従量課金制)
API利用では、入力と出力のトークン数に応じた従量課金制を採用しています。
種類 | 条件 | 料金(100万トークンあたり) |
入力トークン | キャッシュヒット時 | 0.14ドル |
入力トークン | キャッシュミス時 | 0.55ドル |
出力トークン | ― | 2.19ドル |
※キャッシュミス=新しい質問や処理で、一から計算や処理を行う必要がある状態
DeepSeek-R1のAPI料金体系の最大の特徴は、競合他社と比較して大幅に安価な点です。特に、キャッシュヒット時の入力トークン料金は0.14ドルと非常に低価格に設定されています。これは、カスタマーサポートの自動応答や定型的なデータ処理など、同じような質問や処理を繰り返し行う用途に適しています。
ただし、出力トークンの料金は入力と比べてやや高めに設定されているため、大量の文章生成を行う場合は注意が必要です。効率的な利用のためには、プロンプトの最適化や出力の制限など、適切な運用方針を設定することをおすすめします。
DeepSeek-R1の使い方

ここでは、DeepSeek-R1をWebチャットで利用する手順を解説します。
まずは、公式サイト(https://www.deepseek.com/)に移動し、アカウント作成とログインを完了させましょう。アカウントの作成は、Googleアカウントまたは、電話番号orメールアドレスで登録可能です。
アカウントの作成が完了したら、以下の画面に遷移しますので、チャット画面左下の「DeepThink」ボタンをクリックし、青く点灯させましょう。

これで、DeepSeek-R1の利用が可能です。DeepSeek-R1は、複雑な数式や数学的な質問が得意ということなので、以下の画像を添付して問題を解いてもらいます。


プロンプト:「画像内の数式を解いてください」
ちなみに上記問題の解答は、以下のとおりです。

DeepSeek-R1の解答

DeepSeek-R1は、高度な数学問題も正解できるようです。同等の性能を持つと言われているChatGPTのo1モデル・Gemini Flash Thinkingでも同様の問題を出題しましたが、すべてのモデルで正解していました(ちなみにGPT-4oは不正解でした)。
特筆すべきは、DeepSeek-R1が低コストで開発されたのにもかかわらず、競合他社の最上位モデルと同等の性能を発揮している点です。また、ここまでの性能を持っていながら、無料で利用できる点も評価すべきポイントといえるでしょう。
DeepSeek-R1利用時の注意点
DeepSeek-R1は非常に高性能なAIモデルですが、利用時にいくつか注意点があります。以下、詳しく解説します。
データセキュリティに関する注意点
DeepSeekは中国企業が運営しており、以下の特徴があります。
- データは中国国内のサーバーに保管
- 中国の法律に基づいてデータが取り扱われる
- 日本の個人情報保護法が適用されない可能性がある
データセキュリティの観点から、機密性の高い情報や個人情報の入力は避けることをおすすめします。特にビジネスでの利用時は、社内のセキュリティポリシーに照らし合わせて、利用可能な範囲を明確にしておく必要があるでしょう。
また、利用規約によるとDeepSeek社は、ユーザーの入力データや生成された出力を確認・保存する権限を持っています。アカウントを削除しても、法的な要請があれば一定期間データが保持される可能性があるでしょう。プライバシーを重視する場合は、個人を特定できる情報の入力を控えめにすることが賢明です。
利用制限に関する注意点
DeepSeek-R1は、中国企業特有の制限として、特定の政治的なトピックに関する質問への回答が制限されています。このような制限は、事前に理解しておくことで、業務での利用時に予期せぬエラーを避けることができます。
また、日本語の処理は英語や中国語と比べてやや弱いです。もちろん日本語での利用も可能ですが、より複雑な質問や専門的な内容の場合は、英語で入力し、得られた回答を日本語に変換する方法が効果的でしょう。
まとめ
本記事では、中国のAI企業DeepSeekが開発した大規模言語モデル「DeepSeek-R1」について解説しました。
DeepSeek-R1は、OpenAIのo1モデルと同等の性能を持ちながら、オープンソースで提供され、低価格で利用できる画期的なAIモデルです。特に数学的推論やコーディングの分野で高い性能を発揮し、教育現場やソフトウェア開発などでの活用が期待されています。
一方で、中国企業による運営という特性から、データセキュリティや利用規約には十分な注意が必要です。
DeepSeek-R1の利用を検討されている方は、まずは無料で利用できるWebチャット版から試してみることをおすすめします。ただし、ビジネスでの本格的な導入を検討する場合は、本記事で解説した注意点を十分に確認したうえで判断してください。

AIメディアライター・植田遊馬
Webライター歴4年目。ChatGPTの登場で生成AIの可能性に衝撃を受け「生成AIオタク」に。さまざまな生成AIを駆使しながらライター業を営む傍ら「多くの人に生成AIの魅力を伝えたい!」という想いで、生成AI系メディアでの記事執筆を行っている。
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