
生成AI技術の進化により、さまざまな大規模言語モデルが誕生しています。中でも注目されているモデルがGoogleの「Gemini」とOpenAIの「ChatGPT」です。いずれも高性能で多機能なモデルですが、具体的な違いについて気になっている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、両モデルの「Gemini2.0Flash」と「GPT4-o」を徹底比較します。ベンチマーク性能やマルチモーダル機能、推論能力、料金など、さまざまな観点を比較しますので、ぜひ参考にしてください。
Gemini2.0Flashとは
Gemini2.0 Flashは、Googleが2024年12月にリリースした最新のAIモデルです。従来モデルのGemini1.5をベースに開発され、以下の3つの大きな特徴を持っています。
【主な特徴】
- 処理速度の大幅な向上
- 従来モデルと比較して2倍の処理速度を実現
- 低レイテンシー(通信の遅延が少ない)で快適な対話が可能
- 1回のリクエストで最大8,192トークンの出力が可能
- マルチモーダル機能の強化
- テキスト、画像、音声、動画の同時処理に対応
- より自然なマルチモーダルコミュニケーションを実現
競合他社の生成AIモデルでは、軽量版に「Flash」と名付けられる事が多いですが、Gemini 2.0 FlashはChatGPTの「GPT-4o」と同等以上の性能を誇るモデルです。より詳しい情報や活用方法については、以下の記事をご覧ください。
GPT4-oとは
GPT4-oは、OpenAIが2024年5月にリリースした高性能な大規模言語モデルです。GPT-4の性能をさらに向上させ、以下の特徴を備えています。
【主要な特徴】
- 高度な言語理解・生成能力
- より自然で人間らしい対話が可能
- 複雑な指示にも正確に対応
- 多言語での高精度な処理を実現
- マルチモーダル処理
- テキスト、画像、音声の入力に対応
- 「DALL-E 3」を活用した画像生成が可能
- 高度なコンテキスト理解による正確な応答
GPT4-oは、非常にバランスの取れた高性能モデルで、日常的な活用に便利です。ちなみにGPT4-oは、応答速度やコストパフォーマンスに優れた「mini」もあります。
詳細な機能や活用事例については、以下の記事をご覧ください。
Gemini2.0Flash とGPT4-o を徹底比較
本記事では、両モデルの性能と特徴について、以下4つの観点から比較します。
- ベンチマーク結果
- マルチモーダル機能
- 推論能力
- 料金体系
ベンチマーク結果
ここでは両モデルのベンチマーク結果を参照しながら、詳しく比較していきます。参考にするベンチマーク結果は、以下のとおりです。

【MMLU-Pro(高度な推論力)】
- ・ GPT4-o:74.68%
- ・ Gemini2.0 Flash:76.4% より難しい推論課題や、選択肢が多い問題での性能を測定。Gemini2.0 Flashが若干優位です。
【MMMU(マルチモーダル理解力)】
- ・ GPT4-o:69.1%
- ・ Gemini2.0 Flash:70.7% テキスト、画像、音声、動画の理解力を測定するテスト。Gemini2.0 Flashがわずかに上回っています。
【MATH(数学的問題解決能力)】
- ・ GPT4-o:75.9%(0-shot)
- ・ Gemini2.0 Flash:89.7% 数学的な問題解決力を測定するテストで、Gemini2.0 Flashが大きく優位です。
【GPQA(専門知識)】
- ・ GPT4-o:53.6%(0-shot)
- ・ Gemini2.0 Flash:62.1%(Diamond) 化学、生物学、物理学のPh.D.レベルの知識を要する問題で、Gemini2.0 Flashが優れた性能を示しています。
Gemini 2.0 Flashのデータは一部不足していますが、全体的にどの数値でもGPT4-oを上回っています。ベンチマーク結果から見ても、基礎的な性能はGemini 2.0 Flashのほうが高いことがわかります。
ただし、これらのベンチマーク結果は「タスクの特性や環境によって、異なる性能を発揮する可能性がある」ということにも留意が必要です。
マルチモーダル機能
マルチモーダル(複数の形式のデータを扱う)機能において、両モデルには大きな違いが見られます。詳しく比較していきましょう。
【入力可能なデータ形式】
Gemini2.0 Flash
・ テキスト(複数言語に対応)
・ 画像(JPEG、PNG、PDF形式など)
・ 音声(MP3、WAV形式など)
・ 動画(MP4、MOV形式など)
GPT4-o
・ テキスト(複数言語に対応)
・ 画像(JPEG、PNG、PDF形式など)
・ 音声(MP3、WAV形式など)
※アプリ版では動画も入力可能
入力面の大きな違いとしては「動画の扱い」です。Gemini2.0 Flashは、PCの画面を動画として保存し、その動画を認識する「Share your screen」という機能があったり、PCの内蔵カメラの映像を認識する「Show Gemini」という機能があったり、動画認識に優れています(スマートフォン版アプリでも動画入力対応)。
一方でGPT4-oは、PC版で動画を認識することができません(スマートフォン版アプリでは、カメラを通して動画を認識する機能があります)。
【出力機能の比較】
Gemini2.0 Flash
・ テキスト生成(多言語対応)
・ 音声生成(自然な音声合成が可能)
・ コード生成(複数のプログラミング言語に対応)
GPT4-o
・ テキスト生成(多言語対応)
・ コード生成(複数のプログラミング言語に対応)
・ 音声生成(自然な音声合成が可能)
・ 画像生成(DALL-E 3を活用した画像生成が可能)
出力面の大きな違いとしては「画像生成の有無」といえるでしょう。Gemini2.0 Flashでは、画像を生成してもらい、出力する能力はありません。一方で、GPT4-o は画像生成が可能です。
ただ、正確に言うとGPT4-o自体に画像生成能力があるわけではありません。GPT4-o は、OpenAIが開発した画像生成AI「DALL-E3」に画像を生成してもらっているのです。
画像生成の流れとしては、以下のとおりです。
- ユーザーがGPT4-oに画像生成を依頼する
- GPT4-o自体には画像生成能力はないため、GPT4-oがユーザーの指示を基にDALL-E3へ画像生成を指示する
- DALL-E3が生成した画像をユーザーに直接提供
Googleも「Imagen 3」などの画像生成モデルを開発しているため、将来的にモデルが統合されれば、同じように画像出力が可能となるでしょう。
推論能力
ここでは、両モデルの推論能力を比較します。「推論能力」とは、与えられた情報や前提から論理的に結論を導き出す能力のことです。
推論能力を試すには、論理的思考や発想力、既存の知識を応用する力などを引き出す要素がある“なぞなぞ”が適しています。
まずは以下のプロンプトを入力してみます。

プロンプト:「あなたにちょっとしたなぞなぞを出題します。しいたけ・しめじ・舞茸を積んで走っているトラックが、急カーブの際に落としたのは何?」
ちなみに、上記のなぞなぞの解答は「スピード(速度)」です。
両者の回答をみてみましょう。
Gemini2.0 Flash

GPT-4o

両者ともに間違っていますね。なぞなぞに対する推論能力は似たような性能の気がしますが、Gemini2.0 Flashのほうが「なぞなぞの解答」っぽい気がします。なぜなら、この手のなぞなぞでは「問題文にある要素(しいたけ・しめじ・舞茸)のどれかが解答と思い込ませる」というのが常套手段だからです。
そういう意味では、Gemini2.0 Flashは常套手段には乗らずに「運転手」という解答をしています(間違っていますが)。
ちなみに、さらに高い推論能力があるとされているChatGPT o1モデルは、同じなぞなぞに正解しました。

料金比較
両モデルの料金体系を、基本料金とAPI利用料金の観点から詳しく比較します。まず基本料金ですが、Gemini2.0 Flashは現在、Google AI Studioを通じて無料で利用可能です(現在プレビュー版で提供されているため、今後有料になる可能性があります)。一方でGPT4-oを利用するためには、ChatGPT Plus以上のプランへ加入する必要があります(月額20ドル)。
また、API利用料金は以下のとおりです。
【API利用料金(100万トークンあたり)】
モデル | 入力トークン | 出力トークン |
Gemini2.0 Flash | $0.075 (128Kトークンまで) | $0.30 (128Kトークンまで) |
GPT4-o | $5.00 | $15.00 |
※2025年1月時点
※ Gemini2.0 Flashは現在プレビュー期間のため、料金が変動する可能性があります。
現時点では、コスト面でGemini2.0 Flashが圧倒的に優位です。ただし、プレビュー期間終了後は料金体系が変更される可能性があるため、注意が必要です。
まとめ
本記事では、GoogleのGemini2.0 FlashとOpenAIのGPT4-oについて、ベンチマーク結果やマルチモーダル機能、推論能力、料金などを比較しました。ぜひ参考にしていただき、用途や予算に応じて適切なモデルを選択しましょう。
両モデルの特徴を理解し、目的に合わせて使い分けることで、さらなる業務効率化や新しいサービスの創出につながるはずです。

AIメディアライター・植田遊馬
Webライター歴4年目。ChatGPTの登場で生成AIの可能性に衝撃を受け「生成AIオタク」に。さまざまな生成AIを駆使しながらライター業を営む傍ら「多くの人に生成AIの魅力を伝えたい!」という想いで、生成AI系メディアでの記事執筆を行っている。
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